研究課題/領域番号 |
26360046
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北原 恵 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30340904)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 戦争 / 表象 / 記憶 / 美術 / 軍事主義 / ジェンダー / ポストコロニアル / 女性 |
研究実績の概要 |
2016年度は、 (1)国際シンポジウムーー2016年7月、国際シンポジウム「美術と戦争:1940-50年代、日本・朝鮮・台湾」を開催(平成28年度大阪大学国際合同会議助成を受ける)。韓国と台湾から美術史研究者を招き、1940-50年代の東アジアにおける戦争と美術の関わり・表象・活動を中心に取り上げ、多角的に論議した。国際シンポジウムでは、①アジア太平洋戦争期の朝鮮半島における戦争画と美術活動(金容澈:高麗大学グローバル日本研究院)、②台湾の戦時期美術における国家表象(白適銘:国立台湾師範大学美術学部)、③日本における在日朝鮮人の美術活動(白凛:東京大学総合文化研究科)、④美術という場における戦争・占領の記憶と再編成(鈴木勝雄:東京国立近代美術館)について発表を行い、それぞれ、専門的知見からコメンテーターが応答した。戦争がもたらしたものは何か――美術作品を通して、戦前・戦後の時代を検証する目的は、達成されたと言える。表象文化論学会『REPRE』(29号2017年http://www.repre.org/repre/vol29/topics/1/)に報告を掲載している。 (2)海外調査ーー①オーストラリア:ANU、国立図書館、国立戦争記念館を調査(2016年6月)。②韓国:ソウルにおいて、民衆美術家たちの聞取り調査、及び李韓烈記念館、ナム・アート画廊調査、がなアートコレクション、近現代史記念館調査(2016年11月、2017年3月)。済州島において、済州抗日記念館、済州海女博物館、済州戦争歴史平和博物館、済州道美術館調査、4.3記念公園・記念館の調査、アトリエ訪問(2017年3月)。 (3)国内調査ーー戦争表象を中心に富山妙子展(原爆の図丸木美術館)、柳幸典展、ボルタンスキー展調査。イメージ&ジェンダー研究会やジェンダー史学会に参加。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度には、国際共同研究を続けてきたアジア・太平洋戦争視覚フォーラムの一環として国際シンポジウムを開催し、ネットワークの強化と研究内容の発展に向けて大きな成果をあげることができた。また国内外の調査も順調に行った。 だが、2016年度末には、戦時下の女性画家に関する報告書を作成する予定であったが、3月に海外出張が続いたため期間延長の手続きを取り、2017年度に行うことにした。以上のことから、全体的には「おおむね順調に進展している」と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度は、本研究課題の報告書を作成することが第一の目標である。報告書の原稿や掲載資料などはほとんど揃っているので、年内には刊行できる予定である。 また、2016年7月に開催した国際シンポジウム「美術と戦争:1940-50年代、日本・朝鮮・台湾」を発展させて、2017年春から「「戦争画」概念を問い直すーアジア太平洋地域の比較調査から」(基盤研究C)の助成を受けることになった。アジア太平洋地域の研究者との交流を深めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
「軍事主義から見る女性美術家と視覚表象」のテーマのもとに行った研究の成果報告書を作成するためである。具体的には、戦時下に活躍した女流美術家奉公隊の主要メンバーの一人であった谷口富美枝(日本画家)について、補足調査を行い、資料集と論文集をまとめる予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
谷口富美枝(日本画家)についての美術史研究者・学芸員・家族らによる論文、および、資料を掲載した報告書の補足調査・編集・印刷費用に充てる計画である。
|