平成29年度は、(延長申請後の)研究年度の最終年度にあたり、引き続き、「ジェンダー平等刑法改正のための理論的研究」を行った。研究計画にあるように、特にフランス刑法学から得られた知見を駆使し、その成果を、論文2本、コンメンタールの解説1本として公表した。また、平成29年6月に110年ぶりに刑法典の性犯罪規定が大幅に改正されたことを受けて講演依頼が相次ぎ、公開の講演会で3回、比較的少数の研究会で1回講演した。その内容は、新たに変更された規定の単なる紹介にとどまらず、改正されず不十分なままにとどまった課題とその理由におよび、改正法の附則9条に規定された「必要な場合の3年後の見直し」を見据えた提言につながるものである。 9月には、2人の女性衆議院議員(当時・共産党所属)に依頼され、フランスでの性犯罪調査に同行した。司法省、政府の男女平等高等評議会、性犯罪被害者支援団体等を精力的に訪問し、進んだ取り組みについて調査した。10月には全国女性シェルターネット20周年記念シンポジウムでの議員フォーラム司会・講演も依頼され、行った。また、12月には立憲民主党男女平等推進本部の立ち上げに合わせ、性犯罪被害者や議員数人を交えた研究会で、平成29年の性犯罪改正で改正されなかった部分(性交等の範囲、暴行・脅迫要件の緩和、公訴時効の撤廃等)を3年後の見直しに際して改正すべきことを主張した。2018年3月にはポワティエ大学刑事学研究所の客員教授として、再度渡仏し、日本の性犯罪改正法の紹介等のフランス語講演を数回行った。 その他、現在までの研究のまとめ作業を行った。
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