研究課題/領域番号 |
26360050
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
三宅 禎子 岩手県立大学, その他部局等, 教授 (30305271)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プエルトリコ人フェミニズム / ブラック・フェミニズム / マイノリティ / ラテン系 |
研究実績の概要 |
プエルトリコ人の女性運動と米国フェミニズム、ブラック・フェミニズムに関する研究を実施した。 プエルトリコ人は、アフリカ系住民との文化的共通点があり、マイノリティ運動では共闘することが多かった。しかし、スペイン語圏の文化という特徴もあり、最近では、他のラテン系女性とともに共闘することも多い。しかしながら、アメリカにおける急激なラテン化現象にアフリカ系アメリカ人の間で反発が起こり、スペイン語の使用を主張するラテン系住民への反発、労働の機会をラテン系移民に奪われるのではないかという黒人側からの反発なども重なり、常に政治的に共闘が成立するわけではない。主流派白人層との対抗上、可能な範囲で共闘する判断が行われる。ただし、多様性の理解のもと、双方の歴史的な過程や状況の理解が進み、反発を乗り越えた共闘のケースが出てきた。貧困地域に追い込まれた住民同士として教育や健康問題、差別問題を解決していくために共闘しないことには政治的影響力を行使できない。そのため、具体的な教育、健康問題でマイノリティとして共闘する事例が見られる。これらの事例を通し、プエルトリコ人文化のなかに黒人問題への意識変化が起き、これまでプエルトリコ人社会では黒人問題は存在しないとされていた常識に変化が起き、黒人女性としての自覚を啓発する運動がプエルトリコ人のなかに生じた。また、アメリカで表面化したLGBTに対する権利運動などの影響がプエルトリコ人のなかに生じ、これまでタブー視されていた問題がプエルトリコ人黒人女性のなかで顕在化するなどの影響が出ている。 つまり、プエルトリコ人女性の運動がメトロポリスであるアメリカ社会の質的変化に深く影響をおよぼすと同時に、プエルトリコ人女性運動のなかにも米国フェミニズムで可視化された黒人女性の問題、LGBTの問題が顕在化するといった現象が見られ、相互に影響が認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プエルトリコ人女性たちとブラック・フェミニズムとの共闘過程が、思ったほど簡単ではなく、敵対し合う側面もあることが判ったため、ブラックフェミニズムとの共闘問題を整理するのに時間を要したため。また、アフリカン・アメリカン側からのラテン系住民との共闘の問題を指摘する文献調査などに時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、プエルトリコ人の側からの文献資料を多く分析してきたが、それでは分析視野が限られるので、再度、ブラック・フェミニズム側からの文献資料などにも当たる必要性が出てきた。客観的な分析を行ううえでの資料分析にも視野を広げていく必要があるため、現地調査でもその点に重点を置いて実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
黒人問題に関する文献分析に時間がかかったため、現地調査までに調査内容の整理が間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度、ニューヨークに向かい、アメリカ東海岸における黒人問題とプエルトリコ人女性との共闘事例の現地調査を実施する。
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