研究課題/領域番号 |
26360051
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
浅井 美智子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (10212466)
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研究分担者 |
梅田 直美 奈良県立大学, 地域創造学部, 講師 (60618875)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 卵子提供 / 代理出産 / AID / 体外受精 |
研究実績の概要 |
年々、出産の高齢化が不妊治療の需要をますます高めている今日、提供卵子の需要もまた高まっていると言える。しかし、他方で、血縁の子どもの欲求も高く、不妊治療を継続している女性やカップルの最大の悩みは、「いつ、不妊治療をやめるか」である。次に問題となっているのは、女性が「不妊治療と仕事の両立の困難」な状況があることである。 日本産科婦人科学会報告(2013年度報告)によれば、体外受精や顕微授精で生まれた子どもは4万2554人を数えている。実に出生数24人に1人の割合である。また、高齢と言われれる43歳を超えて出産をあきらめずに不妊治療を継続している女性たちが相当数いると思われることである。 今年度は当初より計画にあった、ホームページを使った大量調査のための準備に多大な時間を要した。「不妊治療と女性の生き方」というホームページを立ち上げ、現在調査ページを作成し、大阪府立大学の倫理委員会に申請中である。この調査は、6月末から予備調査を1か月行い、8月から2か月間を本調査をするべく準備を進めた。とくに、この調査では、高齢になっての不妊治療において、提供卵子を望むか、望まないか、それぞれの理由を明らかにすることに主眼が置かれている。また、不妊治療と仕事の両立、不妊治療にどのくらいの費用をかけてきたかなどを中心に設問している。 上記調査をより良いものにするためにかなりの下準備を行ってきた。その途上で、「近代の子ども観」からいかに脱却するかが大きな課題であることが明らかとなった。これについては、「いのちへの感度と自己責任」(研究成果参照)で問題を明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度には、「卵子提供ー美談の裏側」の映画上映と卵子提供の問題を討論するシンポジウムを開催し、多くの成果を得た。この成果を得たうえで、本年度(27年度)は分担者ともども、研究会を重ね、今、高度不妊治療における問題点を整理することができた。昨年度にも言及したことだが、日本産科婦人科学会「倫理委員会報告」によれば、高度生殖医療により先天性異常児の実績数は、931例であった。もちろん高齢出産による先天性異常も想定されるが、20歳代、30歳代の出産もかなり見受けられる。まだデータの精査はしていないが、異常児の人工妊娠中絶、また出産後のことはどうなっているのか、調査せねばならないことが多々あることが研究会で確認された。 現在は、ホームページにおける調査の準備を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度でもあり、現在進めているホームページによる調査を遂行し、その結果をまとめることが主たる目的となる。この調査は2段階で行うことにより、ホームページを使った調査であっても精度をあげる努力をした。 また、7月には「カウントされない命・生」と題するシンポジウムを開催する。(大阪府立大学女性学研究センターとの共催)登壇者は本研究代表:浅井美智子、分担者:梅田直美、山本由美子(死産児について、大阪府立大学教員)、居永正宏(産みの哲学:大阪府立大学学術研究員)である。このシンポジウムでは、医療技術によってつくられる命が増大している一方、技術によって中絶される命、死産児、また生まれてきても劣悪な養育環境によって社会的にカウントされない生について、個々の登壇者による報告とディスカッションを進めるよていである。 今年度は最終年度に当たるので、研究成果の学会報告、書籍での発表などの準備を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
88911円の繰越金が生じたのは、ホームページ調査を行うため、ホームページの作成とそこに掲載する調査表の作成を同じ会社に依頼したため、当初予定していた金額よりも安く作成することができたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
88911円の繰越予算があったため、次年度に「カウントされない命と生」と題するシンポジウムを実施することにした。また、本年度は学会への参加は学内研究費で賄うことができたので、その分で新たな生殖医療のグローバル化における諸問題を探るデータ、書籍の購入ができた。今年度は学会参加費用にも若干充てたい。
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