本年度は、本研究の最終年にあたり、次の3つの柱に研究を行った。まず今日の先端的不妊治療の中で、比較的焦点の当たらない生命について検討するシンポジウムを開催した。2016年7月16日(土)「シンポジウム カウントされない生/命」を大阪府立大学において開催した。報告は「望んだ妊娠から消される子ども」「不妊治療現場から消えていく受精卵」「見えない母子の貧困と孤立」「売買される卵子・妊娠出産」である。 次に、出産を金銭によって代行することをの現状を問うため、アメリカのドキュメンタリー映画「代理出産 繁殖階級の女?」を上映し、日本版製作者の柳原良江さん(代理出産を問い直す会代表)の講演いただいた。その後「女性の生殖身体売買」をどう捉えていけばよいのか、研究会にて議論した。詳細については報告(大阪府立大学「女性学研究25」2018.3予定)、論文等で公開の予定である。 本研究の中心テーマである、高度不妊治療を行いながらも挙児に至らなかった女性たちの先端的生殖医療への評価を問う調査は、ホームページへの回答者があまりに少なく、実質的な成果が得られなかったため、アプローチの仕方を変えて今後も継続していく予定である。ただし、数少ない回答者と直接インタビューを行うことができ、ホームページでの調査がうまくいかなかった理由が明らかになった。彼女たちは自分の不妊治療の経験を語りたいということがわかった。本調査では回答が容易になるよう予測アンサーをあげていたが、個々の回答の選択肢を選択するというよりも、不妊治療の経験的文脈を語りたいということが了解された。したがって、これを生かした調査を今後続けていく予定である。
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