初年度は、要求者組合運動と女性解放運動双方に関わった主に白人労働者階級の女性たちに聞き取り調査を行った他、彼女たちの証言を裏付ける資料を見つけるための資料調査を行った。その結果、1977年4月にロンドンで開かれた、全英女性解放会議において、ベーシックインカムを「全英女性解放運動」全体の要求とすることを求める動議が出され、賛成多数で可決されていたことを突き止めた。また1977年に先立つ同会議においても同じ動議が出され、可決されたものの、議長によって取り消されたとの証言をも得た。この成果について、二つの学会で発表し、うち一つでは女性史の学術誌の特集号への寄稿を勧められ、他方では、最優秀論文賞を受賞した。後者の賞受諾の条件が、その学会誌への投稿であったため、それに従い、後に掲載された。 第2ー4年度は、以下のような研究の進展に伴い、必要なアーカイブワークやインタビュー調査を行った。第一に、イーストロンドン要求者組合運動で、ベンガリ系住民の参加がみられたことが分かり、またベンガリ語で当時作成されたリーフレットなども発見することが出来た。第二に、ブラックカントリー要求者組合運動で、カリブ系住民の参加が見られたことが分かり、カリブ系参加者のインタビュー調査を行った。これらの知見を踏まえて、地域における人種間の緊張を要求者組合がどのように乗り越えようとしていたのか、また白人中心のメインストリームのフェミニズムとの差異などについて分析を行った。 最終年度は、「Wages for Housework」キャンペーンに参加した女性への聞き取りを行い、要求者組合運動と女性解放運動の関係、および要求者組合運動と「Wages for Housework」キャンペーンのあいだの対立と共同などについて、分析をおこなった。
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