研究課題/領域番号 |
26360057
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
田宮 遊子 神戸学院大学, 経済学部, 准教授 (90411868)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 母子世帯 / 貧困研究 / 社会保障 / 家族資源 / 雇用労働 |
研究実績の概要 |
本研究は、母子世帯の経済的貧困の原因と貧困からの脱出を可能にし得る要因について、雇用労働と家族的資源に焦点をあてて検討することを目的としている。近年の三世代母子世帯の増加という事象に着目し、親との同居が母子世帯の貧困を緩和しているのかについて分析を行った。さらに、就労率は高いものの貧困率も高い日本の母子世帯の状況を踏まえ、貧困から脱するための一つの要因として正規雇用という要因にも着目して分析を行うことを目的としている。 母子世帯の構成による違いに着目すると、子どもの年齢が上がるほど、三世代同居の割合が高くなる傾向があるものの、夫婦世帯とひとり親世帯とで貧困率の高低には異なる傾向がみられた。三世代同居が子どもの貧困に与える影響について、ひとり親とふたり親世帯とでなぜ同居率や同居による貧困率の影響が共通の傾向を示していないのか等、世帯構成と貧困率の関係について、さらなる分析の必要性が示唆された。 経済的に困窮している母子世帯にとって、親との世代間支援は生活困窮を乗り切るための一手段となっているのか、あるいは、親世代への支援のためなのか、もしくは、双方向的な助け合いの手段であるのかという点を明らかにするためには、子世代と親世代の双方の世帯・所得情報が捕捉できるデータが必要となるが、現在利用可能なデータには制約があるものの、本研究では、世帯構成、所得、世代間支援の状況を調査した既存データの二次分析を用いて、世代間の経済的支援、育児支援、精神的支援の側面を検討した。先行研究では、親との同居が母子世帯の貧困率を引き下げていることが指摘されているが、本研究では、経済的支援というよりも、育児や介護という双方向的なケアを行うことが同居可能性を高めている可能性があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
母子世帯の貧困問題への雇用労働、および、家族的資源の影響について、最新の研究動向のレビュー、ならびに、既存データを用いた二次分析を行い、その結果について国際学会で報告を行い、論文化を進めている。また、これまで得られた研究成果について、広く一般に公開するよう努めている。具体的には、兵庫県立男女共同参画センター主催男女共同参画アドバイザー養成講座(2015年7月16日)、岡山市男女共同参画推進センター主催岡山市男女共同参画大学専門基礎講座(2015年10月31日、11月21日)、兵庫県女性家庭センター研修(2015年11月21日)において、本研究成果を用い、母子世帯と貧困問題に関する講演を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、母子世帯と雇用労働について、年度前半にその成果を論文としてまとめ、学術雑誌へ投稿する。引き続き大規模データを用いた分析を行い、年度末までに国内外での学会での成果報告を行う。また、母子世帯と世代間支援に関する分析をまとめ、年度前半に国内外の学会で報告し、年度後半に学術論文としてまとめる。さらに、必要に応じて、統計分析に関して、利用できるデータに即した分析手法について学ぶために、専門機関のトレーニングに参加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に参加予定であったデータ分析ワークショップが、実施機関移転により当該年度内に開催されなかったため、予定していた出張旅費を使用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に参加予定であったデータ分析ワークショップの開催状況により、次年度参加し、その参加費、滞在費、旅費に使用する予定である。次年度も開催がない場合は、それに代わり得る国内外の同種のワークショップに参加する予定である。
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