研究課題/領域番号 |
26360067
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
安武 敦子 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (60366432)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害 / 復興 / 新潟:長崎 |
研究実績の概要 |
平成26年度は東日本大震災の復興に寄与することを視野に入れ,普賢岳火砕流および中越地震の遺構に関する調査を行った。普賢岳火砕流に関しては大野木場小学校,みずなし本陣の家屋遺構,中越地震に関しては妙見土砂崩落現場,木籠水没家屋を対象とした。調査方法は新聞データベースから災害に関する記事の抽出,議会議事録の収集,普賢岳火砕流に関しては長崎大学高橋名誉教授から各種住民会議や検討委員会の議事録の提供を受け,それらをもとに時系列を整理した。中越地震に関しては現地調査,さらに木籠集落の自治会長や,当時の県職員,中越防災安全推進機構への聞き取り調査を行い,前後関係や関係者の確認を行った。その上で要因をハード面,規制面,費用面,心情面に分類して保存までにクリアした事項を整理した。 この調査から保存された災害遺構は,災害が発生してから遺構が公開されるまで長い年月を要すことが明らかとなった。原因は保存への合意だけでなく,維持管理や整備の計画を,地域住民,行政機関,中間支援者,土地の所有者等と長い間協議しながら公開に至っているからである。心情面は復興段階に入って初期に方向性に関して合意しており,早い合意がなければその後の長期間の調整に耐えられないと言える。合意にあたっては被災市町村や地域住民の声や活動が,保存決定に大きく関わっている。加えて,中間支援者の存在も重要である。災害が発生した後,当事者は生活再建に必死になる。第三者である大学や社団法人,委員会等の団体の活動無しには保存に至らない。今回の調査の中でも,妙見土砂崩落現場の保存を積極的に訴えたのは社団法人であり,大野木場小学校被災校舎の保存に関しても検討委員会であった。公開に耐えられる復原やその後の維持のための財源に関しては,新潟県中越地震の復興基金は,計画に対する審査体制やメニュー,使い方に柔軟性があり有効であったと位置づけている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新聞データベースや議会議事録の整理は終了した。関係各位へのヒアリングが中越地震の関係者からは話を聴くことができたが,雲仙普賢岳噴火災害が災害から20年以上経過し,役所関係は退職している人も多くアポイントをとることが難しい状況で,当時の関係者から話を聞いたという二次的(間接的)な調査にとどまっている。アポイントが取れ次第聞き取り調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は鉱害の遺構調査として,長崎県や福岡県の旧産炭地の調査を行う予定である。これらは近代化遺産として注目され,九州内のいくつかは世界遺産の九州・山口の近代化産業遺産群の候補になっている。文化的に着目されるなか,当時の再生計画での位置付けから,現在に至るまで位置付けが世論とともにどう変わってきたのかを明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
雲仙普賢岳災害のアポイントが転出や死亡により予定よりも取れなかったこと,地方紙の閲覧費用が社団法人が取りまとめた資料などで一定程度補うことができたため余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度実施予定の雲仙普賢岳災害の聞き取り調査のための交通費に充てる予定である。
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