本研究は、北海道新幹線開業前後を通じて、沿線自治体及び観光関連事業者の見込みや対策、評価をまとめ、加えて地元住民及び観光客の意識及び行動変化を把握し、近年の新幹線整備における効果を考察するものである。今年度は、開業後の調査を行い、開業前との比較を行った。 沿線自治体では、新幹線駅ができる北斗市・木古内町、近隣の中核都市である函館市、車両基地ができる七飯町についてこれまでの取り組みをまとめた。開業前の普及・広報活動から、開業後は主に訪問客向けのイベントが行われていた。 観光関連事業者は、開業後の函館市内の飲食店及び宿泊施設の調査を行った。飲食店の4割、宿泊施設の7割が開業に向けて何らかの取り組みを行っており、開業が自社にとってプラスになったと回答したのは飲食店の4割、宿泊施設の8割であった。 北海道新幹線開業3か月後の調査で沿線住民の15%から4割が北海道新幹線を利用していた。遠方の札幌でも一定程度が利用がある。北海道新幹線開業の地元への影響は、沿線でプラスに受け止められているが、遠方の札幌ではあまり変化が実感されていない。北海道外からは東北だけでなく北関東や一部南関東以南でも飛行機からの乗り換えが起こっている。ただし、訪問先は6~8割が函館のみであり、北海道周遊につながっていない。北海道新幹線の開業効果が沿線にとどまる一因となっている。 北海道新幹線乗客の調査で、新幹線の満足度は車内設備が高く、料金でやや低めである。本数・アクセスの満足度は北海道から遠方になるほどやや低くなり、東京から盛岡、新青森と北海道に近づくにつれて新幹線の本数が減っていく影響を受けている。 北海道新幹線開業に伴って第三セクター化された道南いさりび鉄道はほぼ以前の利用状況が維持されているが、一部に運賃値上げや駅の無人化の影響が見られる。沿線住民から応援の声があり、連携による取り組みが望まれる。
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