研究課題/領域番号 |
26360074
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研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
仁平 義明 白鴎大学, 教育学部, 教授 (10007833)
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研究分担者 |
佐藤 拓 いわき明星大学, 人文学部, 助教 (10577828)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原子力発電所事故 / 風評被害 / 観光 / 地域間の信頼感 / 心の回復 |
研究実績の概要 |
○まず,東日本大震災とそれにともなう福島原子力発電所事故後の地域間信頼感の認識,般化反応としての農水産物回避反応,観光回避反応などと,それらの関係について2015年2月に福島県いわき市のと栃木県小山市の大学生に実施し分析を行った。対象者はいわき市の大学生は105名(女性54名、男性51名)、小山市の大学生43名(女性35名、男性9名)であった。 〇じっさいには放射性物質の汚染がないのに恐怖の「般化」によって購買回避等が起こる「般化被害」については,別な市の同じ野菜、水産物、牛乳・乳製品、衣料品、切り花、観光について、回避する比率に地域差があるかを男女別に検討した。その結果、女性回答者の観光については、小山市の大学生の方が回避する傾向が高かったが、その比率の差は有意傾向であった。その他、有意な地域差は見られなかった。なお、「般化勾配」は2012年調査と似かよったものになった。 〇信頼感と観光回避の関連信頼感の変化についての感じ方と観光回避の関連を男女別に検討したところ、女性の回答者では信頼感の変化の認識度が低いほど、観光回避の傾向が有意に低かった。 ○福島県と栃木県の観光地の一部宿泊業者に対して,原発事故後の地域間の信頼感の変化の認識,事故直後から現在までの観光客の変化,心の回復にとってサポートとなった顧客の言動等について調査を行った。風評被害による顧客数の変化という点では回復は十分とはいえない傾向があるが,業者側はこうした顧客の反応は不合理だとは感じていない(無理もないと判断している)傾向があった。また,業者の心の回復には顧客の言動がプラスに働くことがあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
○一般の対象者については,匿名調査によって比較的本音といえる反応をえることができた。しかし,観光業者についてはたとえ匿名調査であっても風評被害に関する項目の中で,他の地域からの顧客についてマイナスの反応の吐露を得るのは基本的に難しい点が感じられた。この点は質問紙の回収にも影響がないとはいえない。
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今後の研究の推進方策 |
○観光業者の他の地域からの顧客に対する感じ方については,質問項目を新たなものに組み替えて,本音を回答しやすいものとすることとした。さらに,観光地の宿泊業者を対象とした調査については,質問紙配布→回収という通常の調査とは別に,調査者が宿泊し業者と十分なラポールを形成することで聴き取り調査をするという形式をとることとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
観光業者対象の調査において,観光業者の顧客に対する配慮から本音を引き出す項目について再検討が必要になり,調査項目の組み替えによる再調査計画が必要になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
観光業者対象の調査については,顧客に配慮しながらも本音を引き出せる質問方法と項目を開発し,現地の宿泊施設に調査者が宿泊しながら調査を行う方式をとる。これにより,宿泊調査による使用分が増額される。また,2015年度は英文論文を作成する予定で,これにより費用の支出が必要になる。
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