研究課題/領域番号 |
26360074
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研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
仁平 義明 白鴎大学, 教育学部, 教授 (10007833)
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研究分担者 |
佐藤 拓 いわき明星大学, 教養学部, 助教 (10577828)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 原子力発電所事故 / 風評被害 / 観光 / 促進・抑制要因 |
研究実績の概要 |
福島県の大学と栃木県の大学の大学生を対象に調査を実施した。参加者の大学と同じ県の観光地について評定する際は、県外の人々の意識を想定して回答してもらった。これにより、被災地の人々が想定する被災地以外の人々の観光意欲を測定し、実際の意欲との比較も行った。 予備調査によって得られた観光業に対する風評被害の促進・抑制要因に関する21項目について因子分析を行ったところ、「ネガティブな体験の可能性」(たとえば、「その観光地の空気や水を吸い込むことに抵抗を感じる」などの項目)、「他の観光地への代替可能性」(たとえば、「その観光地へ行かなくても、他の観光地で同じような楽しみを得ることができる」などの項目)、「観光地への援助・親和欲求」(たとえば、「その観光地へ行って、現地の人を励ましたい」などの項目)、「ポジティブな体験の可能性」(たとえば、「その観光地へ行くと、日頃の生活を忘れて、思い切り羽根を伸ばせる」などの項目)、「観光地への配慮」(たとえば、「その観光地の人々が苦労している中で、観光を楽しむのは気が引ける」などの項目)の5因子が抽出された。促進・抑制要因と観光意欲の関連を検討したところ、「ネガティブな体験の可能性」は観光意欲と有意な負の関連を、「ポジティブな体験の可能性」は有意な正の関連を示した。「他の観光地への代替可能性」は、熊本市、那須町に対する観光意欲に対して有意な負の関連を示したが、いわき市への観光意欲とは有意な関連を示さなかった。 本年度は、2016年8月開催の韓国心理学会( 2016 Annual Conference of Korean Psychological Association )、および2016年10月開催の東北心理学会において成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れの最大の原因は、2015年9月の関東豪雨によって白鴎大学がキャンパス内最深1.8mの浸水被害を受け、大学キャンパス全体の被害のほか、申請者所管の心理学実験室が床上1.2mの浸水に遭い、パソコンとその中の資料が全損、さらに大学の学部責任者として被害の復旧にあたらざるをえなかったため、当該研究に割けるエフォートが激減、研究の遅延を招いたことにある。影響は大きく、研究進捗のキャッチアップは困難であった。そのため、平成29年度までの研究延長を申請し、すでに承認済である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、申請当初の計画にはなかった平成28年4月に起こった熊本地震についても現地で研究を行うことを構想したが、余震も長く持続し、現地で観光業関係者の「心の回復」について十分な調査を行う状況にはならなかった。ただし、質問紙調査では熊本地震に関する内容を加えて調査を行った。本年度の研究は、本来の目的の東日本大震災の風評被害研究に限定し、熊本地震の影響研究は今後の問題とすることにする。 これまで質問紙調査の対象地区が限られていたので、次年度は対象地区を全国に拡大するためにウェブ調査を計画する。それとともに、予定通りに進行していない、現地に宿泊して宿泊先の観光旅館やホテルの経営者、従業員から直接に依頼し調査をする研究を行うよう努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
延長申請理由書に書いたように、関東豪雨による所属大学、白鴎大学心理学実験室床上1.2m浸水被害と資料喪失、および学部復旧責任者としての業務にともなって計画実施に遅延が生じたことによる。延長はすでに承認されている。
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次年度使用額の使用計画 |
分担研究者との打ち合わせ旅費、論文作成費のほか、可能であれば、広く全国を対象としたウェブを利用した調査費用にあてる。残余は、観光地の旅館・ホテル等の施設での現地聴き取り調査を行うための旅費宿泊費に使用される。
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