研究課題/領域番号 |
26360074
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研究機関 | 星槎大学 |
研究代表者 |
仁平 義明 星槎大学, 教育学研究科, 教授 (10007833)
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研究分担者 |
佐藤 拓 いわき明星大学, 教養学部, 准教授 (10577828)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 原子力発電所事故 / 風評被害 / 観光 / 心の回復(リジリエンス) / 社会関係資本 / 地域間の信頼 |
研究実績の概要 |
本年度の成果は、主に2つの研究からもたらされた。 第一の「風評被害からの心の回復に関する研究」では、福島第一原子力発電所事故による風評被害がみられるA市の23の宿泊施設の役職者を対象に、震災直前の客数に対する現在の客数の主観値、地域間・地域内の信頼感、および震災前後のリジリエンス、震災後の心的外傷後体験成長等を尋ねる質問紙調査を実施した。その結果、現在の客数の主観値、および地域内の信頼感の程度は、リジリエンスの指標である「未来志向・楽観主義」と「平静さ」と有意な関連があることが示された。この結果から、地域内の連携強化が風評被害からの心の回復に有用であることが示唆された。 第二の「東日本大震災後の地域間相互信頼の変化に関する研究」では、原発事故の影響が大きい福島県,および相対的に影響が小さい栃木県の大学生が,震災後の「地域間の相互信頼」の変化をどのように捉えているかを比較検討した。地域間の相互信頼の変化に関する分析の結果では,福島県の大学生は栃木県の大学生に比べて,ポジティブな反応の割合が有意に低く,両義的反応の割合が有意に高かった。福島県の大学生の典型的な回答パターンは震災から約1年半後の被災三県の住民の回答パターン(仁平,2014)と類似していた。一方,この時点の栃木県の大学生の回答パターンは,震災から約1年半後の被災地隣県(茨城,栃木)住民の回答パターンとは異なり,ポジティブな反応が半数以上を占めていた。信頼感の変化の理由をみると,福島県の大学生は震災後の偏見や差別について述べることが多く,栃木県の大学生は支援や交流について述べることが多かった。以上のことから,福島県の大学生の地域間相互信頼は,放射線問題に起因する偏見や差別の認識によって毀損されたと考えられる。この結果に基づき,社会関係資本の視点から被災地の大学生の心身の健康について考察を行った。
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