研究課題/領域番号 |
26360076
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
能津 和雄 東海大学, 経営学部, 准教授 (90710856)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 黒川温泉 / 広域観光 / 九州 / 熊本県 / サステイナブル・ツーリズム / 需要と供給 / 持続可能な観光 / 地域振興 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究で、黒川温泉の歴史についての詳細を明らかにすべく、古文書から明治・大正・昭和にかけての黒川温泉に関する文献を徹底的に調査してきた。その成果が本年度において、学術書である「熊本の地域研究」(分担執筆:山中進・鈴木康夫編著)として、2015年9月に発刊された。本書では歴史面のみならず、インターネット上における訪問客の嗜好や、各旅館の収容人数や契約旅行会社、泉質などといった詳細なデータに基づく分析を行い、黒川温泉の詳細な状況を明らかにすることができた。また、2015年8月にはモスクワ国立大学にて開催された国際地理学連合の大会であるIGU2015 MOSCOWにおいて研究発表を行い、黒川温泉における観光による地域振興のあり方についてロシア人研究者を中心に大きな反響があった。 その一方で、2015年5月に長崎県雲仙温泉において開催された日本温泉地域学会において、「九州における広域観光と温泉との関係について」と題して、招待講演を行った。この内容は、開催地である雲仙温泉と研究対象地である黒川温泉についての関連性を、九州横断道路を軸に研究発表したものであるが、これをきっかけに九州横断道路の建設が黒川温泉を含む九州の観光振興の歴史に大きな影響を与えていることが明らかになった。そのため、文献研究の必要性がより一層大きくなる結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究のテーマである「訪問客と受入側のギャップ」について文献研究を進めてきた結果、過去の観光政策や交通政策の歴史が大きく関わっていることが判明した。特に九州横断道路に関しては、黒川温泉のみならず九州全体における観光開発に大きな影響を与えたことが分かり、このバックグラウンドについての詳細を明らかにしていかなければアンケート調査の項目作成に大きな影響を与えかねない状況となった。このため、本年度においてのアンケート調査は断念せざるを得ず、九州横断道路を軸とした広域観光の歴史を詳細に調べることに重点を置く結果となった。また、九州横断道路に関しては先行研究が皆無に近い状況であることが判明しており、黒川温泉に対する影響を検証する前段階として、より深く追究する必要に迫られていることも理由である。なお、本研究は当初から「徹底した文献研究を行う」ことを大きな目的のひとつにおいているため、研究の方向性はこれまでと変わらず一貫したものであることを付記しておく。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度になるため、文献研究の成果をもとに来訪客を対象とした広範囲なアンケート調査を行う予定であった。しかしながら、黒川温泉が所在する熊本県において震度7を観測する地震が4月14日と16日の2回も発生するという、未曾有の大災害に見舞われた。余震は1ヶ月にわたって1400回を超える状況にあるうえに、建物の倒壊や道路網の寸断等による甚大な被害が発生したことから観光客は激減しており、当初予定した訪問客に対するアンケート調査は実施が困難となっている。このため、今後はテーマのひとつである広域観光のあり方を再考するとともに、アンケート調査を大都市圏で行うことを検討している。また、九州は本州方面を中心とした観光客が複数の県にまたがって周遊していることも明らかになっており、一部の観光地が被災した場合、被災していない他の観光地も含めて旅行そのものを中止してしまう傾向が強いため、それに対する対応も急務となっている。このため、黒川温泉が他の観光地とどのように結びついてきたか、という点に重点をおきつつも、単独の観光地としての魅力がどの程度あるのか、ということをも見極めたうえで、復興への道筋をつけていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査に関する人件費が未使用であるため前年度から繰り越していたが、その前提となる文献研究にさらに時間がかかったため、本年度もアンケート調査を実施することができなかった。そのため、人件費の支出がなかったことが次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
本来ならアンケート調査を行うための人件費として使用したいところであるが、2016年熊本地震により熊本県が被災し、黒川温泉もその影響で宿泊客が激減したため、対象者である訪問客に対する調査が極めて困難となっている。このため、黒川温泉以外の場所でのアンケート調査を検討するとともに、現地調査及び研究発表のための旅費に充てたいと考えている。
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