研究課題/領域番号 |
26360076
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
能津 和雄 東海大学, 熊本教養教育センター, 准教授 (90710856)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 黒川温泉 / 意識のギャップ / 熊本地震 / 風評被害 / 周遊観光 / 需要と供給 / 熊本県 / 九州 |
研究実績の概要 |
当初は黒川温泉に来訪する観光客の動向をアンケート調査も含めたさまざまな角度から調査することにより、研究成果を挙げることを予定していた。しかしながら、2016年4月14日と16日を中心に発生した熊本地震により観光客が激減する状況に見舞われ、当初の予定を実施することが不可能となった。それだけでなく、自らも被災したため研究の中断を余儀なくされる結果となった。このため、とりあえずの方策として観光関連における詳細な被災状況の把握と記録を行い、マスコミ報道だけでなく各事業者のニュースリリース等による発表の収集に努めた。事態が落ち着いた後には、黒川温泉を度々訪ねて旅館関係者を中心に聞き取り調査を行うとともに、道路や交通機関の不通箇所が与えた影響をフィールドワークにより実地調査した。 その後、観光に関する熊本地震の影響について各方面から発表して欲しいという要望が相次いだため、本研究のメインテーマである「黒川温泉」と「意識のギャップ」に焦点を当てた上で積極的に研究発表を行った。その結果、日本地理学会(2回)・地理教育研究会・日韓中地理学会議において口頭発表を行った。さらに地理学の学術誌である月刊「地理」2016年10月号における特集「熊本地震」において原稿執筆を依頼され、黒川温泉を中心に熊本県全体の観光に関する調査報告を行った。本報告において風評被害が起きるメカニズムの一端を明らかにするという成果を挙げ、研究者のみならず一般の読者からも大きな反響があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年4月に発生した熊本地震は研究対象地である阿蘇郡南小国町黒川温泉にも大きな影響を与え、一部旅館が被災して営業休止しただけでなく、被害がなかった旅館も宿泊者数が激減するという事態に見舞われた。加えて研究代表者が所属する大学も被災し、1ヶ月間の休講措置がとられた。このため研究環境が激変し、当初予定していたアンケート調査を中心とした研究は実施が極めて困難な状況に追い込まれた。このためテーマである「訪問客と受入側の意識のギャップ」に関して、熊本地震によっていかに新たな意識のギャップが発生したのか、という点に研究対象をシフトしたことから、やや遅れた進捗状況となった。なお、本研究課題は研究期間の延長申請が認められたため、最終的には研究を完遂する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は1年間の研究期間延長が認められたため、「訪問客と受入側の意識のギャップ」について、熊本地震による交通アクセスの問題と、それに起因する風評被害に重点を置いて研究をまとめていくつもりである。既に黒川温泉そのものに関する文献研究が終わり一定の成果を出していることから、意識のギャップが生じるメカニズムを解明した上で、熊本地震のみならず他の要因も含めて研究を進めていく。また、国際会議を含む学会発表を続け、成果の公表に努めていくことで、観光振興を軸にした復興への道筋をつけていく。また、国民に向けた研究成果発表を愛知県で行われる大規模な社会教育イベントである「愛知サマーセミナー」にて行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震が発生したことにより研究機関と研究者本人が被災したため、研究の中断を余儀なくされた。また、観光客が激減したことにより対象者が集められないことからアンケート調査が行えなくなったため、人件費の支出がなくなったことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究機関を1年延長したことにより次年度が最終年となることから、国内・国際学会における研究成果の発表に係る旅費として使用したい。
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