本研究はこれまで「人の移動」という部分では類似しながら、相互に異なる性格を持つ現象として捉えられてきた「観光」と「移民」の現代的な相互関係についての研究を行った。その際に本研究が事例として選択したのが、東南アジアにおける中国系住民(華人)のコミュニティやネットワークが、いかにして観光資源化しているのかという問題であった。そこでは、華人のコミュニティやネットワークの諸相を「ディアスポラ経験」という概念によって捉え、異なる民族集団や非華人系国民といった複数のエージェント間でいかにして観光資源として認識、構築、利用されるかという問題について明らかにすることができた。
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