最終年度は、以前に行ったベトナムのサパでの調査をもとに、ベトナム最高峰のファンシーパン山におけるツアー登山の問題点、観光者の責任などに関する研究を行った。それにより、観光者が十分な危険性の認識が無いまま現地ツアー登山に気軽に参加している現状、そういった参加者の意識を助長する要因として様々なアクセシビリティの高さが挙げられることを明らかにした。そして、ツアー登山の危険を回避するためには、登山者としてではなくあくまで観光者としての独自のリテラシーが必要であることを指摘した。 本研究課題全体の研究成果としては、まず、観光倫理の範疇や観光倫理研究の展望を示したことにある。従来は、観光倫理に言及されつつもその判断基準等も不明確であり、実践的な方向性を示せてはいなかった。本研究では、持続可能な観光の理念を踏まえ、観光倫理の考え方とその方向性等を示した。また、観光者に求められる具体的な倫理に関して、ファンシーパン山におけるツアー登山を調査し、参加する観光者の問題点、観光者が無責任に(気軽に)参加してしまう要因などを明らかにした。さらに、観光対象となる少数民族自身が考える観光者の行為の問題などを調査し、世界観光機関の示す観光者倫理等との違い、違いが生じるメカニズムなどについて調べた。さらに、特殊な観光政策を行っているブータンにおいて、観光者管理の在り方や観光に関わる者の観光者の問題行為に関する認識等を調査した。ブータンでの調査およびサパでの調査のうち観光者に求められる倫理等に関する成果については、現在執筆中である。 本研究により得た成果は、持続可能な観光の実現に向けて、観光者に求められる倫理、観光者の管理の在り方などを考えるための一助になると考えている。
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