本研究(都市域における公共交通の移動を円滑化するための情報提供に関する研究)では、研究期間を通じて以下の成果と課題が明らかにされた。都市域における公共交通は鉄道・バスともに、自社の営業内容についての情報提供に注力するため、営業エリアが混在または隣接しているにもかかわらず他社の情報は提供してこなかった。そのため、利用者にとっては同じ移動手段であるにもかかわらず、情報が限定されることによって公共交通の利用のハードルとなっていた。この背景には、本来は自動車が競争相手として事業者間による連携が必要とされるが、事業者間がライバルであるという認識が業界内に根強く残っているためである。そのため、第三者である行政や市民団体、NPO が公共交通マップやバスマップを作成せざるを得なかった状況が明らかにされた。 また、利用者にとってわかりやすいと考えて提供された情報については、事業者単独では相応の情報を提供していることが明らかにされたが、日本語・英語の表現を問わず、事業者間で専門用語や同じサービスの案内に揺らぎが見られる点が明らかになった。これも、事業者間で連携が行われてこなかったためである。そのため、利便性を高めるための案内が逆に不安を与えている事例も存在していることは否めない。一方、公共交通の情報について利用者側の理解度を検討した結果、利用頻度との相関が見られる。そのために提供される情報を検討した結果、対人による案内サービスが適していると考えられる。
|