研究課題/領域番号 |
26370002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
トランブレイ ジャサント 北海道大学, 文学研究科, 共同研究員 (90724279)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 西田幾多郎 / 近代日本思想 / 場所 / フランス語翻訳 |
研究実績の概要 |
平成26年度より5年間の計画で、西田幾多郎(1870-1945)の第Ⅱ期哲学、とりわけ「場所」および「論理」の概念を深化させることを目的とした研究を実施する。西田幾多郎全集(新版)第3 (『働くものから見るものへ』, p. 249-554), 4 (『一般者の自覚的体系』), 5巻(『無の自覚的限定』)のフランス語訳(外国語完訳としては世界初)、日本語-フランス語西田哲学用語集を発行する。日本でも研究例が少ない第Ⅱ期西田哲学の重要性および「人間存在」「環境」「動物」といった倫理学テーマへの応用を世界に発信する。 本年度の実績を以下に示す。;(1) 研究書:研究者のみならず哲学に関心を持つ一般読者への啓蒙を意図した内容の「Je suis un lieu(私は場所である)」をモントリオール大学出版社より2016年9月に刊行した。310ページ。;(2) 西田幾多郎全集のフランス語訳:第Ⅱ期西田哲学の代表的著作でありながら、その難解さゆえにこれまで全体の十数%しか外国語に翻訳されていない全集第4巻「一般者の自覚的体系」(381ページ)をフランス語で全訳、詳細な注釈を加えて、南山大学宗教文化研究所内「知足堂出版」より2017年3月に刊行した。539ページ。;(3) 西田哲学に関する査読付き論文(1)および投稿予定 論文(3報)、(4)西田哲学に関する国内および国際学会における講演(3件)を実施した。学会講演においては、西田哲学論文の構文分析からその論理を紐解く試みを報告し、国内外研究者から高い注目を浴びている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では6冊の書籍を刊行することを重要成果と位置付ける。著者は既に2冊をモントリオール大学出版社より出版した。1冊につき約5000カナダドル(約41.8万円)かかることに加え、再版の難しさが懸念されている。そんな折、南山大学宗教文化研究所内「知足堂出版」より20万円の条件を提示されたため、今後はこちらの出版社を利用する予定である。オンデマンド出版により、後に関心が引き起こされた際にも迅速に対応できる。 研究自体は順調に進んでいる。 a)序論:(西田)NKZ 6巻のフランス語の翻訳(2017年10月から2017年12月まで)。 b)西田幾多郎の論理:「限定」の概念 (2017年4月から6 月まで);「包むこと」の概念 (2017年7月から12月まで);「立場」と「重畳」の概念 (2018年1月から3月まで)。 c)西田幾多郎と近代科学:「相補性の原理」:ニールス・ボーアとヴェルナー・ハイゼンベルクとの影響 (2017年4月から7月まで)。 d)西田幾多郎の場所的論理:クルト・レヴイン の「心理学トポロギー」の影響 (2017年8月から2018年3月まで)、の研究を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
西田幾多郎全集のフランス語訳:西田幾多郎全集第5巻『無の自覚的限定』の翻訳を開始する(今まで60ページ翻訳)。西田哲学の「第Ⅱ期論理」解析:研究を継続し、「西田哲学の転回点」として2018年に出版を予定する。 a)国際大会:「Self: Between Consciousness and Non-Being」、北海道大学(2017年5月13、14日), 発表の課題: 「Between noesis and noema: The determination of the self in Nishida's philosophy」。 b)「元始の会」、北海道大学(2017年5月)、発表の課題: 「西田幾多郎と量子論」。c)国際大会:Third annual conference of the European Network of Japanese Philosophy (フランス、パリ、2017年11月)、発表の課題: 「The influence of Kurt Lewin's psychological topology on Nishida's later thought」
平成29年4月より、北海道大学から南山大学に移籍する。南山大学では宗教文化研究所客員研究員として勤務し、科研費を用いて課題研究を継続する旨の手続きが完了している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が当初想定していたよりも多くかからなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として請求した助成金と合わせて西田哲学に関する研究文献等の購入に使用する予定である。
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