平成26年度より5年間の計画で、西田幾多郎(1870-1945)の第Ⅱ期哲学、とりわけ「場所」および「論理」の概念を深化させることを目的とした研究を実施している。これまでの成果として西田幾多郎全集(新版)第3、4巻 のフランス語訳(外国語完訳としては世界初、単独訳)、および西田哲学研究書2冊(単著)の発行を始め、論文執筆や国内外の関連会議に参加・発表している。日本でも研究例が少ない第Ⅱ期西田哲学の重要性、特に「限定」「包むこと」「立場」「超越」「関係性」の論考、また西田の生きた時代がその思索に及ぼした影響について、文体論や近代物理学の視点から解析し、新しい西田像を世界に発信する。 本年度の実績を以下に示す。(1) 論文:神学者K. Rahnerと西田哲学の論考を比較した論文1報、アクセプト済1報。(2)翻訳・書籍:西田幾多郎全集新版第5巻「無の自覚的限定」を単独でフランス語に翻訳(世界初)。N. Bohrの相補性原理が後期西田哲学に与えた影響を論じた共著図書1冊。(3)講演:西田哲学の論理と明治時代の言文一致運動の相関、近代物理学が後期西田哲学に与えた影響等のテーマに基づく4件の講演。 (4) 賞:2016年に執筆、モントリオール大学出版社より刊行した著書「Je suis un lieu (私は場所である)」に対してカナダ国学術評議会より2018年カナダ‐日本文学賞を受賞。また上記(2)の翻訳に対して、西田哲学会より西田研究基金を受賞内定。 (5)その他:パリ・ソルボンヌ大学よりTeddy Peix氏の学術博士論文審査員として12月に招聘された。
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