研究課題/領域番号 |
26370003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
荻原 理 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00344630)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 魂 / 不死 |
研究実績の概要 |
2016年7月5日、ブラジルのブラジリア大学にて開催の国際プラトン学会大会(XI Symposium Platonicum)の Parallel Session にて 'Immortality and eternity: Cebes' remark at Plato's PHAEDO 106d2-4' と題する発表を行なった(選考を経て。なお、Proceedings に投稿中)。7月12日、ブラジルのサンパウロ大学にて、同題の発表を招待講演として行なった。プラトン『パイドン』における、ソクラテスによる魂不死の最終論証の根本的性格、そして特に、その論証のケべスによる理解の根本的性格について解明した。106d2-4のケべスの謎めいた言葉(「不死なるものは永遠である」という前提が *独立* のステップとして含まれる)は、『パイドロス』における魂不死の議論を予描するものと解し得、両箇所の背後にアルクマイオンの議論があった可能性がある、と論じた。 9月18日、国際基督教大学にて開催のギリシャ哲学セミナー第20回研究セミナーのシンポジウム「なぜいまギリシャ哲学か―回顧と展望―」にて、「ギリシャ哲学研究と哲学」と題する提題を行なった。本提題に基づく原稿は『ギリシャ哲学セミナー論集 XIV』に発表された(web版は2017年3月31日刊)。魂論を含むギリシャ哲学研究がいかに哲学と関わりを結び得るのかについて、提言を行なった。バーニェトによるアリストテレスの倫理学の研究、アリストテレスの魂論の研究をモデルとし、ギリシャ哲学研究を通じて現代哲学の議論に有効な問題提起を行なうことを目指すべきであると論じた。 このようにして、プラトン、アリストテレスの魂、特に魂不死についての思索の根本的性格や可能性の解明が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラトン研究の最大規模の権威ある国際学会(国際プラトン学会)において、選考を経た発表を行なった。海外の一流大学(サンパウロ大学)にて招待講演を行なった。国内の有力学会(ギリシャ哲学セミナー)の第20回を記念するシンポジウムで提題を行ないかつこれを公刊した。 プラトンの諸対話篇の魂不死の諸議論の関連について、アルクマイオンとも関連させながら、ユニークな見解を提示した。ギリシャ哲学研究と哲学の関わりについて、アリストテレスの魂論の特殊性を考慮しつつ、明確な提言を行なった。 このように、名実ともに、古代哲学における魂の可死性・不死性をめぐる議論の解明はおおむね順調に進展していると言えよう。 投稿中の論文が国際プラトン学会の Proceedings に採用されなかった場合には、改訂の上、別の海外の査読付き雑誌に投稿する。
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今後の研究の推進方策 |
古代の魂可死説・不死説の論拠および含意を解明する、という方針に変わりはない。 だが、最終年度である次年度には、次の諸点に留意しつつ、研究を完成させるつもりである。 1.魂可死説・不死説が持つ *政治的* 含意。この点に関しては、プラトン『政治家』・『法律』、アリストテレス『政治学』の研究が必要となろう。 2.現代哲学(分析哲学を含む)との接点。この点に関しては、魂ないし心による *価値* の把握という主題が重要となろう。 3.魂論と *自然哲学* 一般とが相互に持つ含意。この点に関しては、プラトン『パイドン』・『クラチュロス』・『国家』、アリストテレス『自然学』の研究、そしてストア派、エピクロス派の関連する研究が必要となろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
他品目の経費が大きくなった(英語論文のネイティヴ・スピーカーによる校正を依頼したことが大きい)ため、他品目の支出について慎重になった。特に、書籍の購入について慎重になった。残額は12,113円と少額である。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に購入を控えた書籍の購入に充てる。
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