研究課題/領域番号 |
26370008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 芳久 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50375599)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トマス・アクィナス / アヴェロエス / マイモニデス / 比較哲学 / 比較宗教学 / 比較神学 / 法哲学 / 自然法 |
研究実績の概要 |
本研究の研究目的は、別々に研究されることの多い西洋中世哲学、イスラーム哲学、ユダヤ哲学を同じ土俵に乗せ、以下のような三つの成果を得ることである。第一は、思想史研究における空白部分を埋め、古代哲学からイスラーム哲学・ユダヤ哲学を経てラテン・キリスト教世界に至る哲学史の多角的な再検討を行なうという基礎的研究の遂行である。第二に、法の哲学的根拠づけという哲学の根本問題の一つに関して、比較哲学的観点から取り組む。第三に、現代の焦眉の課題である文明間対話に関して、西洋近代的な観点からのみ取り組むのではなく、共通の地平の中で文明を形成していたとも言える中世哲学の時代に着目することによって、三文明間の連続性と非連続性の詳細を明らかにし、新たな対話の可能性を見出す。すなわち、本研究は、哲学史的・文献学的研究、法哲学的探求、文明論的対話という相互に連関した重層的な目的を有する。
このような全体の研究目的を背景に、今年度は、ユダヤ世界を代表する哲学者・神学者であるマイモニデス(1135-1204)の主著『迷える者の導き』をアラビア語原典で読解し、その成果を「マイモニデス『迷える者の導き』における「啓示的法」と「理性」」という論文にまとめた。ユダヤ世界を代表するマイモニデスの法論は、イスラーム世界のアヴェロエスとラテン・キリスト教世界のトマス・アクィナスの法論の比較思想的考察のための大きな補助線を提供するものである。本研究の一つの中心軸となるマイモニデスについての論考をまとめることができたことによって、本研究は、一つの峠を無事に越えたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三大一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の比較哲学的考察に関する本研究をバランスよく進めていくためには、三大一神教についての研究を同時進行的に進めていくことが求められる。
今年度は、ユダヤ世界を代表する哲学者であるマイモニデスについての論考を発表するとともに、イスラーム世界からラテン・キリスト教世界への知の伝播に関わるトマスの主著『対異教徒大全』についての論考も活字にすることができた(「トマス・アクィナス『対異教徒大全』の意図と構造」、上智大学中世思想研究所編『中世における制度と知』所収、151-190頁)。
このように、三大一神教のそれぞれの思想的営みについての研究がバランスよく進められており、本研究課題はおおむね順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、本研究課題は、これまでのところ、おおむね順調に進展している。
それゆえ、当初の予定どおり、最終年度に、「哲学史的研究と法哲学的探求に基づいた文明論的対話の構想」に取り組んでいく。そして、西洋中世哲学研究、イスラーム研究、ユダヤ学、比較文明論、比較法学という複数の領域の知見を有機的に結合しながら、「三大一神教における法概念の比較哲学的考察」についての探究をまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額として、195円が発生した。これは、年度末になって残った少額の残額を無理に使い切らず、次年度の予算と合わせて処理することにしたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度分と合わせ、物品費として使用予定である。
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