研究課題/領域番号 |
26370011
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐藤 一郎 山梨大学, 総合研究部, 教授 (80178706)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スピノザ / 「短論文」 / 「知性改善論」 / 翻訳・注・解題 / 認識の受動性 / 観念 / 対象 |
研究実績の概要 |
平成29年度に合せて出版を予定しているスピノザの初期二作品「知性改善論」、「短論文」の翻訳・注釈・解説から成る作品集(全体で五百頁ほどにおよぶ)について、すでに両作品の訳稿と注釈は出版社に入稿した。平成28年度は、「知性改善論」について原文と照合しながら訳文と注釈をあらためて吟味し、初校を終えた。もう一方の「短論文」に関しては、19世紀半ばに写本が見つかる少し前に発見された(二つの写本のうち二次的とみなされる写本と同じ写字生による)「概略」を翻訳し、その注釈とともに出版社に入稿した。「知性改善論」、「短論文」両方について、これまでの研究史を総括しながら、歴史的・文献学的問題を整理する「解題」の執筆を始め、完成に近づけた。 「短論文」の注解を進めた過程で、その哲学のいちばん重要な、また誤解もされてきた、問題点が認識の受動性というこの作品だけで強調された性格にあること、そしてその要諦が、観念のうちの対象というありかた(essentia objectiva)が含む肯定・否定に究極することをすでに確かめたので、本研究の一つのまとめとして、それを主題とする論文の構想を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出版予定の作品集のうち、「解題」部分を除いて出版社に入稿でき、「知性改善論」は初校を終えた。 「知性改善論」と「短論文」の前後関係、両作品の執筆事情(また「知性改善論」が未完のまま中断された理由)、伝承など歴史的、文献学的問題を扱う「解題」の執筆に着手でき、出版の計画が具体的なスケジュールに上った。
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今後の研究の推進方策 |
「知性改善論」、「短論文」の解題の完成。「知性改善論」(訳と注)の再校。「短論文」訳文の原文と照合しながらの初校、先行研究と照合を確認しながらの注の初校および再校。両作品の用語(ラテン語とオランダ語)の索引完成。 フランス語による二つの論文の執筆とそのフランス語校閲。 「短論文」の認識論を主題とした論文の執筆。
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次年度使用額が生じた理由 |
『スピノザ 短論文・知性改善論」の完成と出版に向けた研究作業が大詰めに差しかかったため、研究推進のために計画していた海外出張を先送りせざるをえなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
フランス語による論文のフランス人による校閲。研究のレビューを受けるためのフランス、イタリアへの出張。研究レビューを受けるためと、資料調査収集のためのオランダへの出張費として使用する予定。
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