研究課題/領域番号 |
26370011
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐藤 一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (80178706)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スピノザ / 知性改善論 / 短論文 / 翻訳、訳注、解題 / 認識の受動性 / essentia objectiva |
研究実績の概要 |
本研究の主要な課題の一つであった、スピノザ初期哲学を成す二作品、「知性改善論」と「神、人間とそのさいわいについての短論文」の翻訳、訳注、解題を完成させ、出版した。(1)翻訳と訳注は文献学的な厳密さを徹底させながら遂行された。(2)解題は、ユダヤ教会破門から今日伝わる最初の書簡の日付までの、スピノザの伝記上の「闇の時期」に焦点を当てつつ、「知性改善論」と「短論文」それぞれの成立事情および執筆順序の問題を歴史的に考察し、知見を提示した。(1)(2)ともに、これまでの研究史を総括するものになっている。 「知性改善論」と「短論文」それぞれの認識の問題を検討した中で、「短論文」のもっとも枢要な(また誤解もされてきた)問題が、認識の受動性という、この作品だけで強調された性格づけにあり、その要諦は、「観念のうちで対象を表している観念の有りかた」(essentia objectiva)が含む肯定・否定にあることを確かめた。これを基に、スピノザの認識論、ひいては哲学そのものの意義を見きわめるという方向づけを得、本研究のもう一つのまとめとして、この問題を主題とする論文の構想を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の一環として、スピノザ『知性改善論/神、人間とそのさいわいについての短論文』(翻訳、訳注、解題から成る)を刊行した。 その過程で得られた問題への着眼をもとに日本語での論文の構想を練り、またそれとは別にフランス語での論文を準備している。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題に関して、フランス語での論文を執筆し、国際的にスピノザ研究を主導する立場にあるフランスのピエール=フランソワ・モロー教授からレビューを受ける計画である。他方、国内学会誌(査読審査つき)に投稿する計画のもとに別の日本語論文準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 『知性改善論/神、人間とそのさいわいについての短論文』出版のための作業が大詰めに差しかかったために、当初年度内に予定していたフランス語論文のフランス人によるフランス語校閲と、論文のレビューを受けるための外国出張を先送りせざるをえなかったため。 (使用計画) フランス語論文のフランス人による校閲の依頼。研究のレビューを受けるためのフランス出張。近年発見された(刊行『遺稿集』に収められたテクストよりも前の段階の)「エチカ」の写本調査のためのヴァティカン出張。
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