アリストテレスのウーシアーという語は、従来の日本語訳では「まさしき物」を意味する「実体」と訳されてきた。しかし本研究は、多くの箇所でウーシアーと「何であるか」という表現との互換的使用の確認、「トデ・ティ」「ヒュポケイメノン」などの関連諸概念の分析などを通じて、ウーシアーの基本的な意味は「何であるか」という問いに対して応答するものであることを示した。 さらにこのような意味のウーシアーがストア派においては物体的存在の原理として変容されて理解され、このことがギリシア語のhypostasisと字義通りには対応するラテン語substantiaという語と結びつくことを可能としたことを跡づけた。
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