研究課題/領域番号 |
26370016
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
舟場 保之 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (20379217)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 法と道徳の関係 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、法と道徳の関係をめぐる現代の哲学的議論の特徴について、カントおよびいわゆるカント派と呼ばれる人たちがこの関係についてどのように捉えていたかを参照することによって明らかにし、法と道徳の関係についてどのように議論すればもっとも説得力があるかを示すことにある。そのため、2015年度は、カント派の探求として、絶対的演繹および相対的演繹とは異なり、法と道徳の間に導出関係を一切認めず、少なくともケアスティングの解釈によれば、現代のパースペクティヴからは非常に魅力的な議論を展開しているように見えるフォイエルバッハの思索を考察した。また、フォイエルバッハ同様に、法と道徳の間に導出関係を見出すことのない後期フィヒテの哲学に着目した。フィヒテは、前期と後期において法と道徳の導出関係に関してまったく正反対の見解を示しているので、そのロジックを明らかにすることによって、当該の問題をめぐる議論の焦点をよりいっそう明確にすることができた。12月には、大阪大学において共同研究会(第2回大阪哲学ゼミナール)を開催し、この問題に関する哲学史的知見と現代の議論との接合を試みることができた。さらに3月には、やはり哲学史的知見と現代の議論とを関係させて研究活動を展開するフランクフルト大学のヴィラシェク教授を訪ね、集中的に意見交換を行い、有意義な成果をあげることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するうえで、アーペルおよびハーバーマスの法と道徳の関係に関する見解を明確にし、両者の相違点がそれぞれのカント理解にもとづくことを裏づけておくことが必要であるが、2015年度中に、各種研究会に参加するとともにゼミナールを開催し、またフランクフルト大学にドイツ人研究者を訪問して意見交換を行うことを通じて、この裏づけをより明確に行うことができた。また、この考察と並行して、カントおよびカント派の人々、とりわけフォイエルバッハおよび後期フィヒテの思想を明らかにしておく必要があったが、こちらについても、両者の法と道徳に関する見解のロジックを明確にすることができ、現代の議論へと接合することが可能になった。したがって、研究は当初の目的を果たすうえで、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
すでにこの2年間において、カントおよびカント派と呼ばれる人々の議論を詳細に跡付けることによって、アクチュアルな議論の状況に一定の道筋をつけるとともに、逆に現在進行中の議論のパースペクティヴから哲学史を振り返ることによって、哲学史にも新たな道筋をつけることを試みつつある。今年度もこうした双方向的な研究営為を継続し、カントおよびカント派と呼ばれる人々が法と道徳の関係についてどのように議論を展開しているかを明らかにしつつ、現代においてアーペルおよびハーバーマスが展開している当該問題に関する議論の異同を跡付け、法と道徳の関係をどのようにとらえることにもっとも説得力を見出すことができるかを示すこととする。そのために、ここ2年間と同様に、各種研究会に参加し意見交換を行うとともに、哲学ゼミナールを開催して研究成果を吟味する。また、哲学史研究および現代の議論状況を十分に踏まえたうえで有意味な研究成果につなげられるように、当該分野での第一人者であるドイツ人研究者を招いて集中的に共同研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費・謝金を予定していたドイツ人研究者が体調を崩したため、レクチャーを実施できなかったことが最大の理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
他のドイツ人研究者を招聘し、昨年度予定していたレクチャーを今年度実施するよう計画を変更し、当該予算を使用する予定。
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