1. フランスで発行されている欧文専門誌に、オックスフォード大学で書かれた作品と推定される『ウスター倫理学注解』の校訂版及び作品解説の論文が掲載された。 2. 未公刊の諸本資料であるヨハネス・ティティンザールの『倫理学註解』の序文及び第一巻の校訂版テキストの作成を終えた。当該作品の写本間の関係を明らかにし、校訂版の注に記載した。また、当該作品が依拠している資料(アリストテレス、キケロ、ボエティウス、アヴェロエスなど)を明らかにし、校訂版の注に記載した。校訂版作成上の疑問点を解消するために、コペンハーゲンを訪問し、これまで数々の校訂版作成に携わってきたコペンハーゲン大学教授のSten Ebbesen 教授に助言を受けた。 3. イギリスのケンブリッジ大学及びオックスフォード大学を訪問し、ヨハネス・ティティンザールの二つの写本の第一巻の書写の不明点を解消するとともに、写本全体の状態を確認した。 4. ヨハネス・ティティンザールの『倫理学注解』の写本の状況、著者や著作年代の確定、第一巻に見られる哲学的倫理学と幸福論の主要な理論的特色をまとめた論文を英語で執筆し、ウェブ上で公開した。写本作成の年代と理論的特色から、『ウスター倫理学注解』は、ヨハネス・ティティンザールの『倫理学註解』の影響を受けて書かれた作品の可能性が高いとの結論を出した。また、ヨハネス・ティティンザールの『倫理学註解』は、同時代のパリ大学で書かれた註解、トマス・アクィナスの『神学大全』と『倫理学注解』及びアルベルトゥス・マグヌスの『倫理学注解』の影響を受けて書かれた作品であることを明らかにした。
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