研究課題/領域番号 |
26370021
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森田 邦久 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80528208)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 時間論 / 量子力学 |
研究実績の概要 |
本年度は、11月に首都大学東京で開催された日本科学哲学会にて「哲学的時間論と物理学における時間について」という題目のワークショップをオーガナイズして、かつ自身も講演をした。WS全体の趣旨は「時間に関する各哲学的立場は、もちろん純粋に哲学的に妥当性を議論されるべきものでもあるが、一方で、物理学的な観点から見たとき、それぞれの立場をどのように評価できるのかを議論することも有意義であろう。そこで、本ワークショップでは、時間に関してさまざまな立場に立つ論者たちが、自身の立場や他の立場と物理学との関係性について講演する」というものであるが、私自身は、量子力学についての各解釈と上述の各時間論的立場との関係性について講演をした。 また、Journal of Quantum Information誌とJournal of Modern Physics誌にそれぞれ論文を掲載した。これらでは、「二状態ベクトル形式(TSVF)」という量子力学の一形式を用いた解釈によって、量子力学の哲学的諸問題を解決することを試みたが、このTSVFを用いた新しい解釈の特徴は、現在の状態が、過去の状態からだけではなく未来の状態からも決定されると考えることで、本プロジェクトでの文脈でいうと、従来の過去が現在を決め、また現在が未来を決めるという一方向的な時間観ではない時間観を提案することによって、哲学的な諸問題を解決するための新たな糸口を提供したと評価できるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトの課題は「現代物理学の知見を用いた時間に関する哲学的諸問題と時間の本質の解明」であったが、まずは量子力学を用いた研究成果を出すことができたので、順調といえよう。また、相対性理論を用いた研究も現在進行していて、論文はすでに書き上げて投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、量子力学を用いた成果は公にすることができたので、今後は相対性理論や宇宙論を用いた成果を出すことである。期待される成果としては、論文の発表とシンポジウムの開催である。シンポジウムは、宇宙論や量子力学の研究者、さらに形而上学的時間論の研究者らを集めて開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国外旅費と物品費が予想より少なく済んだため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、大規模なシンポジウムを予定しているので、参加者の旅費などに使用予定
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