現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画は主に(1)「サールの社会存在論に関する考察」、(2)「社会存在論の背景」、(3)「社会存在論の余波」という三つの柱から成るものだった。(1)に関して、われわれは『社会的現実の構築』(1995)における構成的ルールが、『社会的世界の制作』(2010)において、より一般的な「地位機能宣言」に置き換えられた理由を詳細に検討し、いわゆる「支えなしで立つY項」の問題と無関係ではないことを論証した。(2)に関しては、「社会存在論」がそれ以前のサールの仕事に多くを負っていること、とりわけ彼の言語行為論(Searle, J. R., Speech Acts: An Essay in the Philosophy of Language, Cambridge University Press, 1969〔坂本百大・土屋俊訳『言語行為』勁草書房、1986年〕)および志向性理論(Searle, J. R., Intentionality: An Essay in the Philosophy of Mind, Cambridge University Press, 1983〔坂本百大監訳『志向性』誠信書房、1997年〕)は、ともに社会存在論を支える屋台骨であることを説得的に示した。また、それらの理論の原点(オースティンの言語行為論、フッサールの志向性理論など)にまで遡り、サールとは異なる仕方で社会存在論を捉え直す可能性も示唆した。(3)に関しては、おもに河野勝『制度』(社会科学の理論とモデル12、東京大学出版会、2002年)、盛山和夫『制度論の構図』(創文社、1995年)、岩井克人『会社はこれからどうなるのか』(平凡社ライブラリー、2009年)といった社会科学者たちの仕事の中にサールの理論を正確に位置づける試みを行った。 したがって当初の計画はおおむね遂行されたと判断する。
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