研究課題/領域番号 |
26370022
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
倉田 剛 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (30435119)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会存在論 / サール / 制度的対象 / カテゴリー / 固有機能 / 志向性 |
研究実績の概要 |
平成27年度の主な研究成果は、同年4月24日にスウェーデンのストックホルムで開催された北欧現象学会第13回年次大会(Nordic Society for Phenomenology, 13th Annual Conference)および同年11月21日に首都大学東京で開催された日本科学哲学会第48回大会のワークショップ「人工物の哲学」において、口頭発表というかたちで公にされた。 前者の発表“From Phenomenology to Social Ontology”では、J. サールが The Construction of Social Reality (1995)とMaking the Social World (2010)において行った社会存在論への寄与について確認したうえで、サールの理論が「制度的対象」(会社、大学、国家など)を十全な仕方で扱うことのできるカテゴリー体系を欠いていることを指摘した。そしてこの欠陥を補うために、E. J. ロウの「4カテゴリー存在論」の拡張版(自然種と同様の仕方で人工物種を論じることができる体系)を、サールの理論の中に導入することを提案した。また、今後の社会存在論は、集団的志向性についての考察に偏ることなく、一般的な「カテゴリー論」として展開される必要があることを提言した。 後者の発表「人工物の哲学:その見取り図と課題」は、私自身が企画したワークショップの提題発表である。この発表中で私は、固有機能という概念を軸にした、社会的・制度的対象(とくに貨幣など)に対する「起源論的アプローチ」と、志向性という概念を軸にした「志向的アプローチ」との対立を考察し、起源論的アプローチの理論的利点は大きいとはいえ、それは志向性によるアプローチを必ずしも排除するものではないことを主張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画は主に社会存在論と形式的存在論との接点を明らかにすることであった。従来のサール理論およびそれにもとづいて構築された社会存在論は、明確なカテゴリー体系を提示することはなかったが、私はこの年度に行った二つの研究発表の中で、制度的対象が人工物種の一つに属すること、およびそうした人工物種が他の存在者のカテゴリーとどのような形式的関係に立つのかをある程度明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、社会存在論の基礎となる一般的なカテゴリー体系に関する著作を出版する予定である。また、27年度に行った研究発表をもとにした論文を執筆することも予定されている。前者の著作では制度的種を包括できるような形式的存在論を論じ、後者の論文では生物種に関する理論がどの程度まで人工物種、とりわけ制度的種に適用できるのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国内学会への参加を見合わせたため。
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次年度使用額の使用計画 |
学会参加のための旅費として使用する。
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