本研究は、近年J. サールによって基礎づけられた社会存在論の根本諸概念を再検討することから出発し、その困難を解決することを通じて、特異なあり方をする制度的・文化的対象の存在論的構造を明らかにすることをその課題とした。われわれは従来の社会存在論が形式的存在論(一般的存在論)との整合性を欠いていること指摘し、自然種と人工物種の双方を統一的に扱うことができる適切なカテゴリー体系の導入を提案した。それと同時に、われわれは制度的・文化的対象が属する種(人工物種)の理論が社会存在論の研究に一定の貢献をなしうることを示した。
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