研究課題/領域番号 |
26370031
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森 一郎 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (00230061)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 世界への愛 / ハイデガー / アーレント / 東日本大震災 / 世代 |
研究実績の概要 |
森は2014年4月、東北大学に赴任し、仙台の地で活動を開始した。情報科学研究科の同僚である篠澤和久、文学部哲学・倫理学合同研究室の戸島貴代志、直江清隆、荻原理、村山達也、さらには宮城教育大学の田端健人、川﨑惣一、石田雅樹と、研究上の緊密な連携を構築するに至っている。また、情報科学研究科の言語学、心理学、社会学、政治学、メディア論、ひいては経済学、工学、理学、医学、といった多様な専門分野のスタッフとの知的交流に努めてきた。学外では、仙台や福島における「哲学カフェ」に参加し、市民との哲学的対話にも力を入れている。こうした人的関係の広がりは、東北に哲学ルネサンスを興すという大志を花開かせつつある。 その一方で、以前からの全国規模の研究交流の成果の一つとして、2014年11月、秋冨克哉、安部浩、古荘真敬との共編著『ハイデガー読本』を法政大学出版局から刊行した。本文の分担章に加えて「序」を執筆するなど、森が編集上の中核を担った本書は、現代日本におけるハイデガー研究の到達点として、多方面から高い評価を受けた。また、2014年9月にハイデガー・フォーラムで行なった発表は、「世代」という本研究の中心テーマを扱い、大きな反響を呼んだ。 大学の授業では「3・11以後の哲学と倫理」を講じ、東日本大震災の経験から哲学の可能性を切り拓く思考を、学生とともに粘り強く展開してきた。学外でも、被災地にて見聞を積み、一般市民と意見交換し、新聞記者のインタビューに応じ、新聞に書評を書き、また東京ドイツ文化センターで矢野久美子とともにアーレントをめぐる対論を行なった。 この一年間で、本研究の研究課題である「世界への愛」についての原理的考察が、肉付けを与えられたと言えよう。その成果を目に見える形で世に問う準備が、着実に整ったのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度の大きな目標の一つであった『ハイデガー読本』を刊行できた。もう一つの目標であったアーレント『活動的生』の翻訳も、再校まで進んでおり、公刊一歩手前まで漕ぎつけている。また、学会発表、シンポジウム、講演をこなし、多彩な論説を公表するなど、研究の開示も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、まず、アーレントの主著『活動的生』の翻訳を、みすず書房から刊行する。これは、十年がかりの仕事がついに完成することを意味する。また、「ハイデガーとアーレント」、「リクールとアーレント」、「アリストテレスとアーレント」という三つの論考を執筆する。さらに、ニーチェの代表作の一つ『愉しい学問』を、講談社学術文庫の古典新訳シリーズの一冊として出版すべく力を注ぐ。その他、日本哲学会の『哲学』をはじめ、複数の学会雑誌への寄稿も予定している。 以上の仕事と並行して、年来のハイデガー、アーレント研究を踏まえての「世界への愛」についての原理的探究を、書き下ろし単著にまとめるべく、引き続き努力を重ねていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通り使用したが、端数として1,921円出たので、次年度に使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品として使用する予定。
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