研究課題/領域番号 |
26370032
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
朴 倍暎 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (70361558)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人倫 / 道 / 人間共同態 / 五常 / 間柄 / 主体的行為的連関 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、和辻哲郎、そして西田幾多郎の倫理的思考において、すでに多くの指摘がなされているにもかかわらず、いまだ明らかにされていない、儒教との関わりを取り上げ、儒教が彼らの思想のなかで、どのような変容を遂げ、また再構築されてきたかを考察することによって、「近代日本の倫理学」の特徴をより明確にするところにあった。そのような研究目的のもとで、平成26年度においては、まず和辻哲郎の倫理学における「人倫」の意味や位置づけに関する考察が行われた。 本研究においては、和辻哲郎における「人倫」とは、西洋哲学・倫理学の土台に基づきながらも、さらに儒教的な意味が多分に込められている概念であるという前提から出発した。和辻自身が言っているように、倫理とは「人間共同態の存在根拠として、種々の共同態に実現せられるもの」であり、また倫理学とは「人間関係・従って人間の共同態の根底たる秩序・道理を明らかにしようとする学問」である。(いずれも『人間の学としての倫理学』)そのさい、彼の倫理的思考の底辺に据えられている概念が「人倫」である。 では、和辻哲郎の「人倫」を取り上げるさい、それは儒教のどのような側面に関わってくるものなのだろうか。本研究においては、和辻の「人倫」概念は江戸時代の儒者伊藤仁斎の「人倫」に関する思考形態を土台にしていると考える。儒教的世界観において、「人倫」を定型的な枠組の上に載せて理解しようとする思想体系が朱子学であるならば、仁斎は、前もっていかなる前提も設けない、今、「ありのまま」の人間の姿から「人倫」の基礎付けを行った人物である。和辻の「人倫論」は、仁斎の考えていたそのような「人倫論」の影響を少なからず受けたと本研究では考えているのである。平成26年度は、そうした点をふまえつつ、和辻の「人倫」概念に関する基本事項の確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、本研究の全体的目標を達成するための、最も基本的な事項の再確認を行い、そして平成27年度以降の研究基盤を固めていく期間であった。平成26年度においては、研究計画とおり、緻密な研究が行われ、当初の研究目標を十分達成した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、まず、伊藤仁斎の主要著作を中心に、仁斎の「人倫論」の特徴を抽出し、さらにそれを朱子学の理論との比較を通じて、近世日本の儒教思想における「人倫論」を形作っていく予定である。そして、その結果を土台に昨年度に確認した和辻哲郎の「人倫論」との比較を行い、近代日本の倫理学における思想的特徴の一面を形成していく。
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