研究課題/領域番号 |
26370033
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
福間 聡 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (40455762)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 財産所有の民主制 / ベーシック・インカム / 国家の正統性 / 有意義な仕事 / 生きがいのある生 |
研究実績の概要 |
前年度の研究成果を踏まえ、平成27年度は①「財産所有の民主制」の可能性の探求と、②国家の正統性と所得保障政策との連関性についての研究を行った。①に関しては、ロールズを修正資本主義的福祉国家の擁護者と見なしていた従来的な見解が見直され、よりラディカルな社会保障制度をロールズは提案していたという解釈が現在優勢となっている。私もこの解釈を支持しているが、では財産所有の民主制にあってはどのような制度編成を理想的なものとしてロールズは構想しており、その理想を実現するためにはどのような具体的な制度が必要となるのか、またこの社会体制においては人びとの「労働の権利」や「働くことの意味」はどのようなものとして理解されるべきであるのかについて、内外の文献研究を行った。この研究を通じて、自由で平等な、理性的な市民として「生きがいのある生」を送ることを可能とするような制度編成が構築されなければならないという結論に至った。②に関しては、ロールズ的な視座から、国家の統治権力の正統性の規範的な根拠を探求することを通じて、個人の所有権と国家の領土権についての類比的な関係について考察し、この考察を踏まえて、国家間の規範的な関係(節度ある平和、他国に対する援助義務、対外的な正統性)について吟味することを内外の文献研究を通じて行った。人権を実効的に保障していることが国家の正統性の根拠であるとロールズは見なしているが、この研究を通じて、その人権の中にはベーシック・インカムのような所得保障への権利が含まれるべきであるという結論に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度においては、国家の正統性やグローバル・ジャスティスの観点から所得保障政策(ベーシック・インカム)についての考察を行ったため、当初の研究計画を拡張することになったが、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度、前々年度に引き続き、「働くことの意味」という観点から望ましい所得保障政策について平成28年度も考察する。所得保障に関する実証的研究と規範的研究を参照しながら、日本社会の現状において、いかなる所得保障政策が望ましいのか、また有意義な労働とはどのようなものであるのかについて、内外の文献の批判的検討を通じて探求を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は旅費を用いて学会や研究会に行く時間的余裕が無かったため、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は教育と研究のバランスととり、積極的に学会や研究会に参加することで、旅費を使用したい。
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