研究課題/領域番号 |
26370039
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山本 幾生 関西大学, 文学部, 教授 (00220450)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 解釈学 / 理解 / 構造 / 現象 / ディルタイ |
研究実績の概要 |
本研究は、ディルタイを出発点にして20世紀に展開した解釈学を出発点に戻って吟味することによって、解釈学の新たな展開を提示することを意図している。本年度はその第一段階として、ディルタイの解釈学が〈現象・構造・理解〉という三つの概念の統一的連関を基礎にして成立したことを解明した。 その方法としては、ディルタイと解釈学に関わる研究史においても出発点となっている、20世紀初頭のミッシュの現象学批判を取り上げ、その批判的論点の整理をすることによってディルタイ固有の〈現象・構造・理解〉という三概念の統一的連関を際立たせるという方法を採用した。というのも、ディルタイのこの三概念の統一的連関は、ハイデガーへの展開のなかで、またフッサールによるディルタイ批判のなかで、埋もれてしまったものであるのに対して、すでにミッシュの現象学批判が生の哲学という観点からこの点を突いていたからである。しかもミッシュ自身は生の論理学の形成へ向ったため、この批判自体が注目されることがなかったのである。 ミッシュの批判的論点は、ハイデガーはディルタイの生の分析から伝統的な形而上学へ回帰することによって多様な様態の生を、またフッサールは学の厳密性へ向かうことによって具体的な現象を、見失ってしまった、という点にある。そして彼自身は具体的な生の統一的形成を、理解のもつ意義化の働きに求める。ここから本研究は、〈生の働き〉を、〈現象の多様性を包含しながら理解の意義化によって構造的な統一体を形成すること〉に求め、〈現象・構造・理解〉が生の多様な内実、それらの連関、そしてその統一体形成の働きを表わしたものであり、不可分であることを明らかにした。 以上は科研研究会「ディルタイ・テキスト研究会」を計7回延べ8日間に渡って開催し、ミッシュ『生の哲学と現象学』の講読を通して遂行した。また研究会情報は随時URLで公開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年の計画で以下のような三つの段階を踏んで目標を達成するように計画を立てており、本年度は本研究初年度としてその第一段階を遂行した。 その三段階とは、すなわち、①ディルタイの解釈学が〈現象・構造・理解〉という三つの概念の統一的連関を基礎にして成立していること、②しかしその後の解釈学はディルタイの〈理解〉概念を引き受けて展開したが、〈現象・構造〉は背後に退いたままであること、③したがって〈理解〉の〈現象・構造〉への関係を掘り起こすことによって解釈学の創造性を〈意識現象の構造連関に従った、過去から未来への歴史的社会的連関の創造的形成〉として新たに展開しうること、以上の三段階である。 これら三段階に照らして、本年度は上記「研究実績の概要」に記載のように、第一段階①をほぼ達成しており、研究はおおむね順調に進展している。 また、研究目的の達成のために、成果の公表と相互批判の場として「ディルタイ・テキスト研究会」を大阪と東京で交互に開催している。本年度は、上記「研究実績の概要」に記したように、ミッシュの難解な書と言われている『生の哲学と現象学 - ディルタイの道筋からするハイデガー・フッサールとの対決』を取り上げ、7回延べ8日間の集中研究会を開催することによって本年度の研究目標を達成しており、研究会も本研究を推進させるために順調に運営されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は目的を達成するために、上記「現在までの達成度」で示すように、三段階を経る計画を立てており、今後の研究もこの計画に従って、次年度は第二段階②を、最終年度は第三段階③を遂行する予定でいる。 そして第二段階②の研究内容は、ディルタイ以降の20世紀における解釈学の展開がテーマになっているため、ドイツ語圏ではハイデガーからガダマーを経てペゲラーに至る展開、そしてフランス語圏ではリクールのテキスト解釈学を視野に入れて研究を推進する。と同時に、こうした解釈学の展開のなかで見落とされ、またディルタイ自身も十分に遂行できなかった課題〈生の哲学における倫理学の基礎づけ〉についても視野に入れて、解釈学の展開を再考する。 その方策としては、これまでと同様に「ディルタイ・テキスト研究会」を研究者相互の批判の場として位置づけ、本研究を推進する。とくに次年度には、3年間の研究の中間地点となる夏季に、研究前半の中間的総括とともに研究後半の研究内容の再吟味と推進を図るために、研究合宿を予定している。
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