研究課題/領域番号 |
26370042
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三浦 秀一 東北大学, 文学研究科, 教授 (80190586)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 科挙 / 明代思想史 / 性理大全書 |
研究実績の概要 |
『性理大全書』に関する文献の調査としては、東京都立中央図書館に収蔵される『新刊憲臺釐正性理大全』七十巻を実見し、その巻末に「嘉靖壬子歳仲夏/余氏自新齋梓行」と記される木記があることを確認し、同館の『目録』がこのテキストについて「嘉靖四十年刊余氏自新堂」と記すのは、何らかの過誤ではないかとの推察をおこなった(木記の「壬子歳」は嘉靖三十一年)。また中国の南京図書館において、丁丙氏旧蔵の『性理群書集覧大全』七十巻のマイクロフィルム版を閲覧し、その巻末に「正徳辛未宗徳/書堂鼎新刊行」と記される木記があることを確認した(木記の辛未は正徳六年)。そして丁丙氏による跋文の内容と照合することにより、このテキストが先行する『性理群書集覧』を「謄写」し、さらにそれが木版によって刊行されたテキストである可能性を推察した。 研究者との交流に関しては、平成27年9月29日に応用科挙史学研究会主催第15回研究集会を開催し、「科挙研究の潜在的意義」とのテーマのもと、熊本崇氏(東北大)と高津孝氏(鹿児島大)とに研究発表をおこなっていただいた。熊本氏の演題は「経義進士と詩賦進士」、高津氏のそれは「科挙社会における物語の意味」であり、当該の研究に対し、歴史と文学双方から貴重な提言を得ることができた。また同年11月23日と24日の両日、厦門大学で開催の「第十二届科挙制与科挙学国際学術研討会」に参加して、出席の劉海峰教授らと意見交換をおこなうとともに、「明朝宣徳、正統期郷試解額制度的影響」と題して報告し、科挙の定員問題と受験者の学習内容との関連性に言及した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都立中央図書館で『新刊憲臺釐正性理大全』を閲覧し、また南京図書館では丁丙氏旧蔵の『性理群書集覧大全』を、マイクロフィルム版ではあったが閲覧し、その成立の背景について推測がおこなえたことは、本年度の収穫のひとつであり、また科挙研究を文学史の側面からおこなってる高津孝氏との研究交流も、本年度の研究計画を遂行するうえで、非常に有意義であったと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
新潟県立図書館など、本邦各地の図書館における資料調査を引き続きおこなうとともに、海外諸機関の文献調査を遂行できるよう、予定を立ててゆきたい。また国内外の研究者との意見交換も積極的におこないたい。
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