研究課題/領域番号 |
26370042
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三浦 秀一 東北大学, 文学研究科, 教授 (80190586)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 性理大全書 / 中国近世思想史 / 中国哲学 |
研究実績の概要 |
研究成果に関しては、2016年6月23~25日開催の「明末清初学術思想史再探国際学術研討会」(台湾・中央研究院近代史研究所)において「《新刊性理大全》的出現及其時代背景」と題する発表をおこなった。また、この会議に先立って開かれたワークショップ「16到18世紀東亜世界的文人社集」(6月22日、近代史研究所)における報告「晩明的「諸子学」与社集運動」のなかでも、本研究課題と関連する内容の発表をおこなっている。両者はともに、明代末葉の思想状況を、当時における民間出版の活況およびいわゆる東林派人士の政治的・学術的活動と関連づけながら考察したものであり、これらの要素が錯綜して関係し合う思想情況下、永楽三大全の改訂もまた人々によって意識され、『性理大全書』に対しても改訂のための多様な試みが提示されたことを明らかにした。 学術交流に関しては、10月29日~11月1日、中国長沙湖南大学岳麓書院を会場として開催された国際会議「儒学的歴史演進与伝播」に参加して「十三世紀北中国的程朱学与許衡的思想」と題する報告をおこなった。この会議では、元明時代の学習環境と教学方法に関する研究発表を聴くとともに、張崑将や朱漢民といったこの方面の専門家と意見を交換する機会を得た。さらに、会議後は衡陽師範大学を訪問し、王船山思想研究の第一人者である朱迪光教授らとともに船山の遺跡を調査し、船山思想研究の現状について討議したこともまた、永楽三大全の明末清初的受容状況を解明するうえで大いに役立った。例年、継続して開催している応用科挙史学研究会は、9月20日に第16回研究集会を開催し、熊本県立大学の山田俊教授を招聘して「中国近世の文献資料と諸子の思想」とのテーマで討議をおこなった。 文献調査の面では、新潟県立図書館所蔵『性理大全書』を調査し、当該のテキストが明末出版のそれであることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年2月末『科挙と性理学』と題する専門書を出版し、その第一章「『性理大全書』の書誌学的考察」では、明代嘉靖期までの『性理大全書』の流通状況を、増注各テキストの作成や出版、同書前半のいわゆる成書の学習傾向などと関連づけつつ解明したが、4月以降は、嘉靖につづく隆慶・万暦期における性理学の展開や、明清の鼎革期における三大全改訂運動などについて、それらを取りまとめるとともに、文献調査や学術交流もまた平行してすすめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
清初人士における『性理大全書』もしくは『新刊性理大全』の受容状況の解明につとめるとともに、そうした思潮と諸子学との関連性についても新たに考えるとしたい。その方法として現在念頭に浮かぶのは、清初人士の個人文集に対する京都大学人文科学研究所での調査と、諸子学研究の専門家との対話である。さらに、本年度は、そうした成果の全体をまとめることが最終目標となる。
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