研究課題/領域番号 |
26370045
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
シン 東風 愛媛大学, 法文学部, 教授 (50335882)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海雲碑 / 広通寺 / 紅螺寺 / 浄土信仰 / 普度 / 仏覚 / 雲山 |
研究実績の概要 |
27年度、金元時代北京の仏教をめぐって、下記の研究成果をあげた。 1.前年度の研究に引き続いて、海雲印簡及び彼の周辺人物に関する研究を推進した。①最新発見の資料を参考した上、前年度行った「海雲碑」の研究を充実させて、碑文内容のより正確な解説ができた。その成果は、「〈海雲碑〉読解」のタイトルとして学会発表で公布した。②海雲周辺の人物、特に彼の弟子たちについては、北京・河北・山西などで発見された碑文によって、一部は明らかにした。例えば、海雲の師である中観沼公と中和璋公との二人の関係、帰雲志宣・沖虚昉公と海雲との関係、海雲の弟子である庸庵堅公・華厳智明の経歴など、こういった人物の背景を把握したことによって、金末元初北方臨済宗の様子がさらに明らかになった。 2.前年度の上金貝古墓調査の成果をまとめて、「滄海珠禅師・海雲印簡・明代建文帝」の論文を発表した。結論は、上金貝古墓は元代末期の滄海弥珠禅師の舎利塔であり、海雲印簡と、また明代の建文帝とは関係ないである。 3.金元時代の北京地方における浄土信仰の伝播に関する研究。この研究は、北京の広通寺旧跡・紅螺寺などに現存している碑文を参照した上、清代の際醒禅師に関わる上記寺院の歴史をさかのぼって、元代浄土宗僧の普度と広通寺(当初の法王寺)との関係、金代雲門宗僧の仏覚、また元代雲門宗僧の雲山と紅螺寺との関係、及び際醒の教学や清代紅螺寺における念仏修業や慈善事業などを明らかにした。この研究によって、上記寺院の歴史、関係人物、金元時代大都の大聖安寺と紅螺寺との関係、また当時北京地方における浄土信仰の伝播を判明した。その成果は、「北京地区淨土信仰史跡小考」の論文として学会発表で公布した。 4.遺跡調査の成果。北京・山東省の遺跡調査によって、希弁(2本)・従倫(3本、他2本の存在も分かった)・子安(2本)・行満(1本)などの貴重な碑文を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度の研究は、当初の研究計画より調整して、金元時代を焦点として研究を進めた。主な理由は、海雲印簡の研究は、予想以上複雑である。また、研究作業は、タイミング、即ち資料の把握状態によって決められた。遼代のことは殆ど取りあげなかったが、その代りに、元代の研究は予定より充実した。
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今後の研究の推進方策 |
28年度前半、現在進行中の金元時代北方臨済宗の研究を完成させる。海雲研究の成果を踏まえて、さらに彼以前と以降との北方臨済宗の各人物、及びその伝承関係を明らかにする。後半は、新しく収集した希弁や従倫などの碑文を分析整理し、遼金元時代北京地方における曹洞宗の人物とその活動などを考察する。焦点は、北京に限らず、山東省・河北省・河南省の関係人物までも及ぶ。 研究作業のスケジュール: ①遺跡調査:8~9月、12~1月、3月。 ②研究作業:5~7月は臨済宗の研究、10~12月は曹洞宗の研究、1~3月はまとめ。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の現地調査は、交通費が先方負担になった機会を利用するため、出張費は節約された。 また、27年度末の現地調査は、大学会計の都合のために、出張日程が縮められ、旅費もあまった。
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次年度使用額の使用計画 |
一部は、資料収集のために、国内出張旅費として利用する(今年4月、すでに執行した)。また一部は、図書費として利用する(書籍は今年3月購入したが、大学会計の都合で、登録できなかった)。
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