『古逸叢書』は近代以降の中国古典籍研究と影印出版事業に大きな影響を与えたのにも関わらず、その編纂、出版及びテキストの問題については個別の研究を除き、系統的な研究は未だになされていない。本研究はこの懸案の解明を目指すものであり、地道な文献考証を通してこの歴史・思想・文学などの多分野にわたる基本文献の本文の性質を正確に捉え、底本選択、校勘作業におけるさまざまな問題を十分把握しないままで研究の基本テキストとして使用するといった現状を是正するものである。なお、本叢書の編纂と出版とに対する日本人学者の協力や刊刻技術に関する考察は、近代日中両国間の学術史の新発見へと誘うものであり、重要な意義を有している。
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