平成28年度は,平成27年度に作成した『律経自註』第1章第1ー150経のサンスクリット語テキストならびにその和訳に基づく研究発表,ならびに,その成果のさらなるブラッシュアップを行った. ・平成28年8月に中国蔵學研究中心主催の第6回北京(国際)蔵学検討会(the 6th Beijing International Seminar of Tibetan Studies)に参加して研究発表を行った.その研究論文は出版準備中である.また,国内では日本印度学仏教学会第67回学術大会においても研究発表を行い,その成果は『印度学仏教学研究』第65巻第3号に掲載された. ・平成29年2月には,国内外から律の専門家を招聘し,研究会を開催した.その研究会の主な参加者は,カナダ・マクマスター大学のシェイン・クラーク准教授,佛教大学の山極伸之教授,同大学の岸野亮示博士,北海道武蔵女子短期大学の鈴木健太准教授,東京大学大学院人文社会系研究科・文学部・インド哲学研究室の青野道彦助教,大阪大学文学研究科文化形態論専攻の名和隆乾助教,龍谷大学仏教文化研究所客員研究員の井上綾瀬博士などであった.この研究会において,『律経自註』第1章第1ー150経のサンスクリット語テキストならびにその和訳の見直しなどを行った.テキスト解読にあたって,『根本説一切有部律』における対応箇所を参照することが確認され,テキスト・和訳の細部が改善されるという具体的な成果を得られた.さらに,その研究会に参加できなかったオランダ・ライデン大学のジョナサン・シルク教授,ならびに,ソルボンヌ大学のヴァンサン・エルチンガー教授のもとを訪れ,研究会について報告したばかりでなく,デジタルデータでの研究成果公開について意見交換を行うことができた.
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