研究課題/領域番号 |
26370056
|
研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
辛嶋 静志 創価大学, 付置研究所, 教授 (80221894)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 般若経 / 八千頌般若 / ガンダーラ語 / 支婁迦讖 / 支謙 / 中古漢語 / 大明度無極経 / 大品般若 |
研究実績の概要 |
(I) 昨年度に引き続き《八千頌般若》十二種のテキストを対照した『《八千頌般若》諸本対照』を作成した。漢訳七種、すなわち『道行般若経』(西暦179年訳)、支謙訳(222-257年訳)、『摩訶般若鈔経』(3世紀後半訳)、鳩摩羅什訳(408年訳)、玄奘訳第五会(660-663年訳)、玄奘訳第四会(660-663年訳)、施護訳(982年訳)の対照表は、完成した。大正蔵以外にも金蔵・高麗蔵・各種宋版などを参照して、校訂本の体裁もとっている。あとは、ガンダーラ語写本・梵本・チベット訳・英訳との対照を残すのみである。 (II) 支謙訳『大明度無極経』(西暦222-257年訳)の詞典を引き続き作成している。上記の『《八千頌般若》諸本対照』とこの詞典から、支謙訳は、インドの原典からの翻訳というよりは、むしろ音写語など不自然な表現の多い支婁迦讖訳『道行般若経』を文言化した“焼き直し”であることを明確にすることができた。 (III) 国内外の若手研究者とともにパキスタン・ギルギット出土《大品般若》梵語写本のカラー写真版を出版した。250枚一葉一葉の写真には、対応する漢訳・梵語校訂本・チベット語訳諸版の対応箇所を明示した。この《大品般若》写本は、七世紀初頭に王家の発願で書写されたものであり、由緒正しいものである。しかも全307葉のうち、297葉が残っている貴重な資料である。うち46葉の現所在は不明だが、イタリアのTucciが写真を撮り、そのコピーを筆者は入手した。今後、写本全体の校訂本と漢訳などとの対照本を作成しようと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の最重要課題である《八千頌般若》十二種のテキストを対照した『《八千頌般若》諸本対照』の漢訳部分は完成した。梵本は五割ほど終えたが、チベット訳に手間取っている。『大明度無極経詞典』は五割ほど出来上がった。昨年度後半は、パキスタン・ギルギット出土《大品般若》梵語写本のカラー写真版の出版に、思いの外時間をとられ、《八千頌般若》に十分な時間を割くことができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
《八千頌般若》は大乗仏典の基本テキストであり、この経典の生成・発展・変遷を明らかにすることは、大乗仏教の生成・発展・変遷を明らかにすることになる。 まず、本研究課題である《八千頌般若》諸本の比較研究をさらに深め、一二年内に『《八千頌般若》諸本対照』と『大明度無極経詞典』を完成して出版したい。 さらに、《八千頌般若》とそれを増広した《大品般若》との関係を明らかにする必要がある。将来的には、二つの経典の言語・用語・思想の何が連続し、何が変遷しているかを、文献学的に明らかにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2015年8月から10月まで海外に出張していて、その間にアルバイト学生への仕事指示ができなかった。この二ヶ月間に人件費があまり発生しなかったため、使用金額が少なくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、アルバイトの学生を増やし、入力作業を強力に進める予定である。前年度の余剰金は、増やすアルバイトへの支払いに充てたい。
|