研究課題/領域番号 |
26370058
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
引田 弘道 愛知学院大学, 文学部, 教授 (00192287)
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研究分担者 |
大羽 恵美 金沢大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (50707685)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インド・チベット / インド仏教文学 / 仏教説話 / クシェーメーンドラ / アヴァダーナ・カルパラター / 韻律 / 仏教説話図 / チベット絵画 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、11世紀にカシミールにおいて編纂された『ボーディサットヴァ・アヴァダーナ・カルパラター』(以下『BAK』とする)の、1)サンスクリット語文献とそのチベット語訳を和訳し、主題を同一にする諸資料との比較・研究を行うことと、2)このテキストに基づいて表された美術作品の分析を行うことで、文献と絵画の両側面からインド北部を中心とする仏教信仰の諸相を解明することである。本年度の実績は以下の通りである。 1.原典翻訳および諸資料との比較 『BAK』第32章「ヴィシャーカ物語」と第33章「ナンダとウパナンダ龍王の物語」の翻訳を行い、漢訳仏典等に説かれる類話と比較・考察した。またチベットの絵画作例において絵図同定を行った。、第32章と33章はこれまでにチベット語以外の翻訳はなく、英語による抄訳があるのみだった。今回の原典翻訳によってこれまで絵図の中で同定されなかったエピソードや、先行研究の同定の誤りを明らかにした。成果を以下に発表した(引田弘道、大羽恵美 「『ボーディサットヴァ・アヴァダーナ・カルパラター』第32章、33章和訳」『人間文化 : 愛知学院大学人間文化研究所紀要』 第29号)。 2.美術作品の分析 『BAK』33章において重要なモチーフであるナンダ・ウパナンダ龍王について、それらのイメージの生成と典拠を『BAK』に関連する文献と絵画作例における図像を手掛かりに明らかにし、学会において発表した。(大羽恵美「『ボーディサットヴァ・アヴァダーナ・カルパラター』に見られる龍王の図像について」『密教図像学会』第34回学術大会、東大寺ミュージアム) 3.チベットの『BAK』絵画セットの解明 『BAK』絵画セットはこれまで「ナルタンのセット」と「シトゥのセット」の二つが知られていたが、それらに遡る絵画セットが存在し、複数現存することが明らかとなった(成果の一部は上記大羽発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、『BAK』第32章と第33章の翻訳と分析の発表を行い、さらに、31章「カリヤーナカーリンの物語」と34章「スダッタ長者の物語」の翻訳を進めた。31章と34章については次年度初頭に発表予定である。本研究の根幹をなす文献翻訳のペースは計画通りである。 本年度は現地調査を行う代わりに、これまでほとんど研究されてこなかったチベットの『BAK』の絵画集の複写を研究費で購入することができた。これにより『BAK』の絵画作例への理解が飛躍的に高まった。『BAK』が関連する絵画セットは複数あるとみられ、それぞれの成立や所蔵が明らかになりつつある。次年度以降に成果が発表される。
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今後の研究の推進方策 |
原典翻訳については、今後も当初の計画通りに研究を遂行する。 『BAK』の絵画集については、研究計画作成時には知られなかった新たな絵画セットの存在が明らかになっているので、次年度に中国・北京に所蔵される絵画セットを現地で調査することを追加する。
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