本研究の目的は、11世紀にカシミールにおいて編纂された『ボーディサットヴァ・アヴァダーナ・カルパラター』(以下『BAK』とする)の、1)サンスクリット語文献を翻訳し、主題を同一にする諸資料との比較、2)このテキストに基づいて表された美術作品の分析を行い、3)インド北部を中心とする仏教信仰の諸相を解明することである。 1.原典翻訳および諸資料との比較 『BAK』35章と36章の翻訳を行い、漢訳仏典等に説かれる類話と比較・考察した。またチベットの絵画作例において絵図同定を行い、それらの成果を発表した(引田弘道、大羽恵美 「『ボーディサットヴァ・アヴァダーナ・カルパラター』第36章和訳」『人間文化 : 愛知学院大学人間文化研究所紀要』 第31号)、(引田弘道、大羽恵美 「『ボーディサットヴァ・アヴァダーナ・カルパラター』第35章和訳」『文学部紀要』 第46号) 2.美術作品の分析 『BAK』文献と絵画作例についての口頭発表を行った。(大羽恵美「『アヴァダーナ・カルパラター(パクサムティシン) 』の文献とタンカセットについて」第64回日本チベット学会学術大会 2016年11月19日 身延山大学) 3.インド北部を中心とする仏教信仰の諸相を考察 本研究テーマに関連して、釈尊の真骨の奉納についての口頭発表を行った。(引田弘道 「釈尊の真骨の奉納とウエサカ祭」日本仏教教育学会2016年12月3日 愛知学院大学.)
|