研究課題/領域番号 |
26370062
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
三谷 真澄 龍谷大学, 国際学部, 教授 (20411275)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / ドイツ / 国際敦煌プロジェクト / 中国 / 旅順博物館 / 大谷探検隊 / ドイツトルファン探検隊 / 仏教写本 |
研究実績の概要 |
本年度の事業としては、2016年11月18日に「中央アジア出土資料のデジタルアーカイブ~その現状と課題~」(龍谷大学大宮学舎)と題する国際シンポジウムを開催した。ドイツ隊と大谷隊コレクション双方のインターネット公開を媒介している国際敦煌プロジェクト(International Dunhuang Project,IDP)のプロジェクトリーダーであるSusan WHITFIELD氏(大英図書館)を招聘し、世界各国の中央アジア出土資料のデジタルアーカイブ事業の現況について、また、新たなデータベースの構築などの将来展望等について基調講演をおこなっていただいた。 また、大谷隊コレクションのデジタルアーカイブを手がけてきた龍谷大学古典籍デジタルアーカイブ研究センター(DARC)の研究フェロー江南和幸氏による写本資料の紙質分析の最新研究成果が報告された後、研究代表者が研究成果報告「文献資料のデジタルアーカイブの意義~大谷探検隊とドイツトルファン隊の文字資料調査の立場から」をおこない、ドイツアジア美術館所蔵の美術考古資料のデジタル化にかかわった檜山智美氏(日本学術振興会特別研究員SPD)の研究成果とデジタルアーカイブ事業への期待、そして、岡田至弘氏(DARCセンター長、理工学部教授)による研究発表がおこなわれた。特にDARCは、IDPの唯一の日本支局として旅順博物館所蔵資料のデジタルアーカイブにも技術的協力をおこなってきた実績をもつ。 この国際シンポジウムは、本学世界仏教文化研究センター、アジア仏教文化研究センター、仏教文化研究所、DARCの共催としておこなわれたもので、今後の研究成果共有と統合目録のデジタルアーカイブへの展開に向けて、それぞれの知見を集約し、今後の方向性を眺望する有意義な国際会議となった。 本年度も、アルバイトを雇用して、既刊目録の精査やデータ統合等の作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、本来、2016年度中に完了する予定であった。しかし、種々の状況からドイツ隊の漢字目録が刊行できなかったこともあり、当初の目標より「やや遅れている」とせざるを得ない。また、本研究課題の主要テーマである統合目録の作成については、アルバイトを雇用して、大谷コレクション(旅順博物館・龍谷大学)、ドイツコレクション(ベルリン市内の国立図書館・ベルリンブランデンブルク州立科学アカデミー・アジア美術館の3所蔵機関、トルコイスタンブル大学、日本の出口常順所蔵分)について、既刊目録やデータにもとづく目録統合と精査を進めることはできた。 特に、ドイツトルファン探検隊の収集資料の一部であるトルコ・イスタンブル大学図書館所蔵資料については、引き続きSertkaya教授のもとに依頼をおこなっているが、本年度も、イスタンブル市内の政治情勢の不安定さもあって全点資料の実見が実現できなかったことも、大きな理由の一つである。 こうして、種々の政治状況に加え、最終的にデータが精査し切れていないものもあり、公開までいたらなかった。国際シンポジウムの報告書もデータでは保存しているが、学内の研究成果の切り分け等にともない公開をしなかった。 幸い、研究期間の延長が認められたため、以上に挙げた点のうち、統合目録の公開については、2017年度中におこないたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、2017年度まで研究期間の延長が認められたため、これまで同様、漢字仏典写本の統合データベースの構築に向け、データの精査と公開に向けた調整をおこなう。そのために、専門的な職能を有する研究補助員を採用し、目録作成、公開のため、データの精査や目録作成のためのアルバイト数名を採用し、ドイツ隊と大谷隊の収集した資料に関して、すでに統合をおこなった既刊目録やデータベースの精査をおこなう。さらに、旅順博物館の協力を得て、公開されていない写本の画像データの公開に向けた調整をおこなう。 研究代表者は、2012年度に本学長期国外研究員制度によりベルリンを拠点としてヨーロッパ各地に分蔵される仏教写本を実見する機会を得た。その際、2013年3月にヘルシンキ市内のフィンランド国立図書館でマンネルヘイム収集の漢字資料を実見し、これまで未同定であった漢字仏典を新たに大正新脩大蔵経所載仏典に同定した。最近では、小口雅史氏、片山章雄氏によって旅博所蔵資料と接合する断片が確認されており、大谷隊とドイツ隊の収集品の位置づけを知る上でも、当該コレクションも視野に入れる必要がある。こちらもデータを扱える環境が整っており、最大限活用していく。さらに、2017年度は、大谷コレクションを保管する旅順博物館が開設100周年を迎え、種々の記念行事が開催される予定である。また本年度は、本学短期国外研究員制度として、夏季と春季にドイツベルリンを研究拠点として、データの整理と資料閲覧をおこなう機会を得ている。 このように、科研費と本学の研究員制度を活用して、ドイツを中心とするヨーロッパの研究機関をこれまでの研究成果を継承しながら、今後、より精度の高いデータベースの構築を完成したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
トルコイスタンブル大学図書館に蔵される漢字仏教写本の実見をもとに、統合目録を完成させる予定であったが、イスタンブル市内の情勢不安によって出張ができなかった。また、データの統合をおこない、研究成果の公開を予定していたが、2016年度に諸般の事情で叶わなかった。そのため、研究期間の延長によって、2017年度まで継続して研究課題をおこなうことが認められたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
トルコイスタンブル大学図書館に出張して資料を閲覧する。それが出来なかった場合は、2016年度におこなった国際シンポジウムの内容を公開する。 引き続き、アルバイトを雇用して統合目録の内容をさらに精査して、統合目録を構築し、データを公開する。
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