本研究は、19世紀末より20世紀にかけて極めてユニークな光芒をはなった思想家・社会学者であるゲオルク・ジンメル(1858-1918)の宗教論に焦点をあて、これまで顧みられることの少なかったその宗教理解の特質の解明をめざしてなされた。その際、とりわけ同時代ドイツの、とりわけ都市部における宗教状況という文脈におけるジンメル宗教論の特異性およびその現代的意義を明らかにすることを試みた。ジンメルの宗教論は、近代宗教哲学の痕跡を残しつつ、それを社会的相互行為論と結びつけることにより、宗教社会学の先駆けとなり、また生の哲学の導入によって、同時代の「流浪する宗教性」にひとつの方向づけを与える試みであった。
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