研究課題/領域番号 |
26370070
|
研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
林 淳 愛知学院大学, 文学部, 教授 (90156456)
|
研究分担者 |
岡田 正彦 天理大学, 人間学部, 教授 (00309519)
梅田 千尋 京都女子大学, 文学部, 准教授 (90596199)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 土御門家 / 渋川春海 / 陰陽道 / 天文占い / 梵暦 / 仏教天文学 / 須弥山儀 / 貞享暦 |
研究実績の概要 |
近世に暦と暦学について3つの方面から研究を進めることができた。第1に、貞享暦を作成した渋川春海の思想史的な研究を行い、資料の収集と分析をおこなった。春海の作成した「天文列次之図」「天文分野之図」「天文成象」(国立公文書館所蔵)を調査し、朝鮮で作成された「天象列次分野之図」に拠り、それにみずからの観測の結果を加えていることを確認した。春海の先生にあたる岡野井玄禎が、寛永20年に朝鮮の客螺山に学んだ事実があるが、朝鮮通信使随員の朴安期であったという説に注目した。朴を通じて授時暦の存在と意義が岡野井、春海に伝えられたことが、その後の授時暦ブームや改暦の実行の背景にあったことを推定できる。また春海が尽力した「日本長暦」作成には、古暦法の復活と神社祭祀復興という意図があり、保科正之が指導した諸社禰宜神主諸法度や会津領内の神社改めとも共通する復古という時代的エートスの語り方があったことを明らかにできた。 第2に、土御門家が暦の流通、暦学の発展にはたした機能と、地方の暦学者と交流した資料を発掘することができた。陰陽道支配という宗教者支配の権限の面と、暦学、陰陽道に関する学知・知識の管理の面を考察して、後者にこそ公家本所の特性があらわれていることを指摘した。さらに暦占・易占書の調査を行うことができた。「東方朔秘伝置文」「天時占候」「晴雨考」など近世に成立した気候占いの諸本を検討し、科学と呪術を架橋する知識領域の特質を明らかにした。 第3に、梵暦、須弥山儀に関する資料を収集することができた。円通の生涯に関する事実を検討して、戒律復興運動にかかわっていたことを確認できた。戒律復興運動が近世後期に通仏教的に広がったように、梵暦運動も宗派を超えて広がったといえる。さらにわかったことは、近代になる前に終焉したと思われていた梵暦運動は、実は明治20年代まで継続していたことを解明できた。
|