本研究では、高度情報社会における宗教思想家(あるいは団体)と、それを受け取る「読者としての大衆」との関係の変化を、ドイツのヴィルヘルム期に出版社(とりわけオイゲン・ディーデリヒス出版社とクリスチャン・カイザー出版社)の歴史をサンプルに、以下の2点から考察した。その結果以下の結論を得た。すなわち、信教の自由が保障され、宗教が市場した社会では、宗教的思想家と読者との関係が逆転し、著者が読書に影響を及ぼし、知識や宗教的情報を伝達するのではなく、「読者としての大衆」の嗜好が宗教思想家の考えを形成している。
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