本研究は、日本近代の宗教史における転換期の明治初期に、伊勢神宮改革の一環として行われた「御師」制度の廃止後における旧師職の動向を明らかにすることを通し伊勢神宮と参宮者との近代的関係の再構築を具体的に検証する目的を有する。そのため、散逸が危惧された旧師職の中川采女家・岩井田両家の資料群の保全と活用を図り、資料目録作成とデジタル写真によるアーカイブ化につとめた。また、幕末から昭和初年までの伊勢参宮者名簿群である中川采女家資料の分析により、参宮形態の変化が参宮者とホスト側の相互に見いだせることを明らかにした。近代から現代における伊勢参宮研究の新たな諸課題を導きだしたことも研究の成果である。
|