研究課題/領域番号 |
26370081
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
NEUMAN Florian 香川大学, 学内共同利用施設等, 講師 (80403773)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国家論 / 右翼思想 / ユートピア論 / 政治思想 |
研究実績の概要 |
私の研究計画は、戦前日本の5・6人の右翼思想家の国家論・ユートピア論の分析であり、それぞれの思想家についてまずドイツ語の論文を執筆し、将来英訳のまとまった本として出版する予定である。平成26年度の研究は革新右翼の代表者大川周明(1886-1957)をテーマとした。その研究成果を2015年2月に、東京に事務局のあるドイツ語雑誌『OAG Notizen』で「Okawa Shumei und der Weg zur „Showa-Erneuerung“」(大川周明と「昭和維新」への道)の論文として発表した。本論文は1932年の五一五事件までの大川の「理想国家論」を検討し、彼の日本国家改造についての観念および社会行動を論じた。西洋近現代の国家的・社会的ユートピア論の出発点はギリシャ哲学者プラトンの理想国家論にあり、大川はそれと似た理想を幕末の儒学者横井小楠(1809-1869)の思想のなかで見つけ、1927年の『日本精神研究』で「プラトンの国家は、吾等の精神の情欲に相当する農工商、意志に相当する武士、理性に相当する統治者の三者より成る」と主張した。大川はまた江戸時代の思想家佐藤信淵(1769-1850)の理想国家論を賛美した。大川が想像した「道義国家」は主に伝統的な儒教思想に基づき、ロシア人哲学者Wladimir Solovieff(1853-1900)とドイツ人教育学者Rudolf Steiner(1861-1925)の思想を包含した。1925年に形成した右翼団体「行地社」の7綱領は大川の思想を要約したものである。そのなかの〈維新日本の建設〉の綱領は上杉慎吉(1878-1929)の主張「国家は最高の道徳」を借用し、〈精神的生活に於ける自由の実現〉、〈政治生活に於ける平等の実現〉と〈経済生活に於ける友愛の実現〉の綱領は Steiner の「社会有機体三層化」理論を当てはめた。結論として大川は、上杉のような観念右翼のユートピア的な国体論と違って、より現実的な国家観を提供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のなかでは大川周明についての研究が中心となるので、今年の夏(6・7月ぐらい)、大川について第2の論文「Okawa Shumei und Japans Krieg in Ostasien」(大川周明と大東亜戦争)を発表する予定である。その第2の論文はすでに半分以上できており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2014年2月に、雑誌『OAG Notizen』で「Die „kokutai-Wissenschaft“ von Satomi Kishio (1897-1974)」(里見岸雄の「国体科学」)の論文と、2015年2月に、本雑誌で「Okawa Shumei und der Weg zur „Showa-Erneuerung“」(大川周明と「昭和維新」への道)の論文を発表した。今年夏(6・7月ぐらい)大川周明について第2の論文、「Okawa Shumei und Japans Krieg in Ostasien」(大川周明と大東亜戦争)の発表を準備している。その論文は大川の「アジア主義」、即ちユートピア論・イデオロギー観点から彼のアジア観を分析し、主に彼の1937年から1945年までの思想・活動をテーマとする。その後、皇国史観の歴史家平泉澄(1895-1984)についての論文「Die imperiale Geschichtsideologie von Hiraizumi Kiyoshi」(平泉澄の歴史イデオロギー)を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度、学会で発表することができなかったので、そのための旅費を使わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度、学会で発表する予定であり、その時旅費を使うつもりである。
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