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2014 年度 実施状況報告書

18世紀ドイツ啓蒙におけるカント歴史哲学の知識社会学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 26370082
研究機関下関市立大学

研究代表者

西田 雅弘  下関市立大学, 経済学部, 教授 (10218167)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードカント倫理学 / カント歴史哲学 / 市民社会 / 道徳性 / 幸福 / 知識社会学 / ベルリン月報 / ベルリン水曜会
研究実績の概要

本研究は、カント歴史哲学の論考を手掛かりにしつつ、カント倫理学の全体を知識社会学的な方法によって再検証するという大きな構想を持っている。啓蒙の時代、とりわけプロイセンの「フリードリッヒの世紀」の社会的エートスにおける「道徳性」の意義を解明した上で、カント文献へ反映を緻密な文献内在的精査によって明らかにする。
初年度の平成26年度は、ヘーゲルのカント批判を糸口に「市民社会」の概念をキーワードとして研究課題の具体化、明確化を試みた。(1)『法の哲学』におけるヘーゲルのカント批判の論点は、カントの「道徳性」の概念そのものへの批判ではなく、合理的で抽象的な「道徳性」にとどまったまま、現実的で具体的な「人倫」へ移行しない点にあることを明らかにした。(2)これに対してカントは、幸福追及を断念させるわけではなく、幸福追求には「道徳性」が不可欠の条件として先行しなければならないことを「幸福であるに値すること」という言い回しによって主張している点を明らかにした。
ヘーゲルは「市民社会」を「欲望の体系」と規定し、その課題を「司法」や「福祉行政」「職業団体」に委ねた。カントにおいても、幸福追及の場として、商業活動が活性化しつつある現実社会が念頭に置かれていることは容易に推測できる。しかし、その状況はヘーゲルの時代に比べれば、まだ生成しつつある未熟な「市民社会」であろう。カントはこのようないわば潜在的な「市民社会」の課題に対して「道徳性」の優位を主張しているのではないか。もしそうだとすれば、カントとヘーゲルの間で道徳性と幸福追求の優先順位の逆転が生じていることになろう。この逆転の要因は、プロイセンの「市民社会」の顕在化にあるのではないか。このような仮説の前提として、「フリードリッヒの世紀」の社会的エートスの解明がカギになることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究課題の内実を再確認するという平成26年度の研究実施計画は、原稿の執筆という点で内容的にはほぼ実施できているものの、年度内に成果物として印刷、公表するには至らなかった。この成果は、「下関市立大学論集」第59巻第1号、2015年5月、に掲載して公表される予定である。また、成果が原稿執筆にとどまったので、予定していた学会発表は行わなかった。

今後の研究の推進方策

本研究の特徴の1つは、カント倫理学への知識社会学的アプローチにある。したがって、平成27年度は、研究の方法と先行研究の解明に集中する。(1)M.シェーラー『知識形態と社会』1925年、を手掛かりにその方法について言及する。(2)日本における知識社会学的アプローチの導入およびカント研究としての先行研究の系譜を明らかにする。具体的には、①三木清・林達雄・羽仁五郎・本多謙三『社会史的思想史』1949年、②小牧治『カント倫理思想の社会史的考察』1959年、③粂康弘『ドイツ観念論の歴史的性格』1978年、④田村一郎『十八世紀ドイツ思想と「秘儀結社」』1994年、などである。
そして、これらの先行研究を跡付けつつ、この系譜を一歩進めるための新たな糸口として、当時の秘儀結社の1つであった「ベルリン水曜会」に着目する。その活動の解明を通して、カントの時代、「フリードリッヒの世紀」における道徳性優位のエートスを抽出する。また、前年度の研究成果について学会発表する。

次年度使用額が生じた理由

当初計画していた学会発表を行わず、旅費の使用がなかったため。

次年度使用額の使用計画

次年度予算とあわせて、研究物品の購入、学会発表の旅費に充当する。

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公開日: 2016-05-27  

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