(1)カントと思想的な親密性のある「ベルリン水曜会」の啓蒙論議を手掛かりにして、「啓蒙の時代」における道徳性優位の社会的エートスを抽出した。 (2)カントの歴史哲学は「開化Kultivieren」「市民化Zivilisieren」「道徳化Moralisieren」という重層的構造をそなえている。とりわけ「市民化」に対して「道徳化」が優位に置かれるところに、「啓蒙の時代」の道徳性優位のエートスが顕在化している。 (3)法的な市民的体制としての諸国家は「連合」を目指しつつ、同時に人類は全体として道徳的な「世界市民社会」を目指す。この道徳的な世界市民主義の原理が「定言的命法」にほかならない。
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